2004年05月09日

ゴールデンウィーク有田への旅(その1)


佐賀県有田の陶器市に行くため5月30日の夜、大阪を出発した。途中、広島県のサービスエリアで仮眠をとり、明け方、本州の西の端、 下関に到着した。

このまま一気に有田まで行こうかとも考えたのだが、8年前に初めて陶器市に行ったときの混雑した記憶が残っていたので、 今回は早朝に有田に到着して、たっぷりと一日、陶器市を楽しみたいと考えた。そこで、取り敢えず下関海峡を渡って、 門司を見学していこうということになった。今回の旅は私と妻と次男の3人、車はハイエースを改造したキャンピングカーだ。

駐車場に車を止めて門司レトロと呼ばれているあたりを散策した。アルトロッジが設計したホテルも見てみたかった。やっぱり、 日本人とは全く違う感性だなぁ・・・と感じながら、ホテルのロビーなども覗いてみた。500キロほど車に乗っていたことと、 天気が良かったことが幸いして、朝の散策は心地よかった。門司駅のレトロな建物とその構内、到着した電車と人の流れ、 それらが醸し出す雰囲気も心地良かった。

黒川紀章が設計したという高層マンションの展望台から下関海峡を眺めているうちに、なぜか、レンタサイクルを借りて、 門司の古い町並を走ってみようということになった。大人用は電動アシスト付きの自転車なので坂道も快適だった。 それを横目に見ながら小学校2年になる息子は、「なんで僕だけしんどいのやぁ」とダダをこねながら門司の路地裏の坂道をこいでいた。 私が住む大阪の下町と同じような長屋が続く裏通りがあり、細く曲がりくねった坂道が続く一角に民家を改造した雑貨屋があった。 そこに吸い込まれるように入ってしまった。店員がどこから来たのですかと言うので、大阪だと応えると、なぜかここは、 大阪から来る人が多いのですよね。長屋とかの光景が似ているからでしょうかねぇと言いながら、 お茶でも飲んでいってくださいと言ってお茶をだしてくれた。別に飲む気もなかったのだが、まぁいいかぁと思って座ったら、 息子がお腹がすいたと言いだし、ハヤシライスを注文する羽目になった。なんだか、 ヘンなところに吸い寄せられたなぁと一連の流れをニタニタして思い浮かべながら、注文はハヤシライス一つだけにして、そそくさと立ち去った。

海沿いを走っていると、船に自転車を乗せて九州の門司から下関海峡を渡って本州の下関まで10分ほどで行けることを知った。じゃぁ、 そうしよう。と話が直ぐにまとまった。息子にとってはちょっとした冒険旅行のような気分で、楽しそうだったに違いない。 船は思っていた以上のスピードを出して、波をバンバンかき分けて進んで行った。静かな九州門司の街から対岸の本州下関に渡ってみると、 賑やかなことに驚いた。唐子市場という市場の前ではお祭りをやっていて、ほんと賑やかだった。唐子市場ではとりたての鮮魚を売っていて、 造りにしたり、天ぷらにしたりして、その場で食べることも出来た。ちょうどお腹もすいていたので、 人混みをかき分けながらマグロや穴子の天ぷら、白子のみそ汁などなど、適当に買い込んで、海沿いのデッキまで持ち出し、食べることにした。 下関海峡を隔てる門司と下関の雰囲気の違い。海を隔てることによってうまれる文化の違いなどに思いを寄せながら下関海峡を眺めた。 こういう食事は、うちの奥方の満足度を高めるようだ。思わぬ出会いに喜んで、結構食べたはずなのに、 またも造りなどを買い足しに走っていった。ダイエットをするとか言う話はどこへいったんやぁ。

下関から門司へ戻るのには歩行者用の関門トンネル渡ることにした。自転車も乗せることが出来るエレベータで一気に地下まで下り、 海底トンネルを自転車で渡った。門司側についてエレベーターで地上まであがり、今、自転車で渡ってきた海峡を振り返って眺めると、なんだか、 妙な満足度が沸いてきた。下関海峡をぐるりと巡るサイクリングが、私に思わぬ印象を与えてくれた。

三時間ほどしか寝ていないのと、前日の仕事の疲れ、それに下関海峡を巡るサイクリングの疲れがたまって、急に眠たくなってきた。 疲れを癒すにはやっぱり温泉だなぁということになり、門司から近い北九州の山間にある温泉に行くことになった。途中、 持参したノートブックVAIOの液晶画面から表示が突然消えた。そういえば、そんな兆候がなかったわけではない、 1週間ほど前から液晶画面に時々横線が走っていたのだ。どうもハードディスクは大丈夫そうだが液晶画面が死んでしまったような・・・。少し、 憂鬱がもたげてきた。休み明けの仕事が出来なくて困るではないか・・・と。まぁ、しかし今更どうなるものでもない、 山の木々を眺めながら露天風呂に浸かり、ゆったりとした時の流れに身をまかし、疲れを癒すことにした・・・・。

午後も4時頃になり、そろそろ有田に向けて出発するため高速道路に乗ろうとすると、事故で九州道が通行止めになっていた。 渋滞の中で時間が過ぎていくのも辛いので、どうしようかと相談しているうちに、そうだ、博多の屋台でラーメンを食べようといいだした。 街歩きと食べ物のことになると奥方の実行力と決断は早い。

福岡・博多に行くのは初めてだった。空港と街が意外に近いのだなぁ思った。繁華街の中の駐車場に車を止めて、 もうほとんど暗くなってしまった博多の街をブラブラと歩いた。そうそう、キャナルシティの中庭も建築的な意味合いでは、体験してみたかった。 川沿いを歩いているうちに屋台の並んでいる一角に出くわした。予備知識もなく、どこが有名で美味しいのかもわからないまま、 今日は行列の出来る店で待つほどの忍耐力を持ち合わせていなかったので、たまたま席が空いていた屋台でラーメンを食べることにした。屋台・ 川縁の席・川・ネオン・対岸の店舗・川をゆっくりと進む座敷船・人混み、それらが醸し出す雰囲気のせいもあってか、おでんも、 ラーメンも牛タンも美味しかった。食べ終わってから、やぱり奥方は、追加でぇ・・・とか言いながら注文を繰り返していた。 今日は天気で良かった。

キャナルシティーに足を向けた。アルトロッジといい、外国の設計者による建物の色づかいは独特で、その感性の違いは面白い。西洋の設計者は、 様々な素材を組み合わせた上に、こだわりのソースで味付けされたフランス料理のような、素材と色づかいが多い。 それに比べて日本の設計者は日本料理のように、 素材の持っている良さと色合いだけを最大限に生かして隠し味をちりばめて空間を表現しようとする傾向にあるのかもしれない・・・・。 なんてことを考えて中庭のベンチに腰掛けているうちに、お便所に行きたくなってきた。そうだ、昨日から一度も大便をしていなかった。 それに今日はチープなグルメを食べ過ぎて・・・・。皆さんはどうだかしれないが、私は、 自分の家以外の便所に行くとどうも用を足せない傾向にある。旅行に行くたびに、住宅の便所の設計は大切にせんとあかんなぁ。と考えるのだが、 実際、便所の設計に注ぐエネルギーは少ない傾向になってしまうことが多い。そんなことを反省しながらキャナルシティーの便所に入ってみると、 以外と綺麗で落ち着いた雰囲気だったので、それなりに事がスムーズに運んだのだった。めでたしめでたし。

夜も9時を回てしまった。今度こそ有田に向かうのだ。と言い聞かせて駐車場に向かった。途中、道を間違えて、 いかがわしい店と呼び込みの店員が待ち伏せている通りに入り込んでしまった。小学校2年生の息子が歩くにはまだまだ早すぎる通りだ。 きっとキョトンとした顔で歩いていたに違いない。こちらもバツが悪そうな顔をしながらわき目もふらず急ぎ足で通りを駆け抜けて行った。後で、 息子は私に、「変なとおりに迷い込んだなぁ。」と呟いた。きっと、息子も10年後には、 あのときの通りがどんな道だったかに密かにほくそ笑みながら、同じような通りをぶらつく時もあるのだろうなぁ・・・。 と考えながら歩いているうちに駐車場に着いた。 夜の高速道路を飛ばして有田に向かう前に川縁にあるスターバックスでキャラメルマキアートを飲んで福岡の街を後にした。

(つづく)


投稿者 木村貴一 : 2004年05月09日 23:40 « ゴールデンウィーク有田への旅(その2) | メイン | 主婦のきらいな家事 »


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