2004年08月20日

お盆休み

男子体操団体が金メダルを取った様子を伝えるテレビを能登、羽咋にあるサウナの中で汗を流しながら見た。 前に座って同じテレビを見ているおっちゃんが、鉄棒で最後の選手が着地した瞬間。そして、 表彰台に立った選手達が手をあげた瞬間に浮かべた微笑みが、なんとも印象的だった。 見ず知らずの人とひょんな場所でひょんな汗をかきながら共有した喜びのその時その場所が記憶の印象として焼き付いた。  

17才の大学受験生と7才の小学2年生の息子を持つ、お盆休みの親の立場は微妙だ。受験生をほったからして遊びに行くとは何たることかと、 私達の両親には非難される・・・・。下の息子は海だ海だと執拗に迫る・・・・。考えてみれば、 私にとっても社会人として働きだしてからの20年間、お盆休みに大阪に居たことがなかった。生まれてからこのかた、ずっと大阪・生野区・ 小路に居ついている。寝るところと働くところが同じ場所なのだ。そんな環境のせいか、時には松尾芭蕉のように「日々旅にして旅を栖とす・・・ ・」なんていう心境にも憧れたりする。まぁ、そんな「旅」の境地に触れる機会が私のお盆休みでもあったりするのだ。  

長男とは0才のお盆から昨年のお盆までの16年間ずっと一緒に「旅」をした。道東道北・東北・佐渡・能登・信州・飛騨・四万十川・屋久島・ 沖縄・・・・・etc。家族だけだったり、私の友人と一緒だったり、息子の友達が一緒だったりと、 息子や奥方のためというより自分のためだったのかもしれないと反省はするものの、どれもが、それなりの「旅」だった。  

働きだしてから初めて大阪で過ごすお盆休み。ゆっくりと朝風呂に入った後、 次男の要請もあり日本橋でプレーステーションのサッカーゲームを買いに行く。ついでに、 マイルスディビスのDVDとジョンコルトレーンのCDなんかも買った。ちなみに、 私はマイルスやコルトレーンやミンガスやモンクなんていう50年代や60年代のJAZZファンだったりする。 といいながらも最近流行の私のIPODの中には70年代80年代のウエストコーストの音楽、イーグルス、ドービーブラザーズ、ネトドヒニー、 ニールヤング、ライクーダー、ディブメーソン、ザバンド、ボブマリー・・・・等々も入っていたりして、いわゆる、 それらが青春時代の思い出の曲だったりするのだ。 

こんなコミュニケーションの取り方が良いのか悪いのかよくわからないのだが、二人の息子とサッカーゲームでバトルをして過ごした。 17才はもとより7才の息子にも負ける。ほとんど、連戦連敗に近い・・・・。それでもゲームを通じて、 通い合う something else もあるのだと。 

負けてばかりするのもあまり気持ちよくないので、もう、疲れた。と不機嫌面などをして、勘弁してもらい、ゆっくりと、 DVDを見ることにした。先ほど買ったばかりのマイルスのDVDを見て、リズムをつけた後、 アマゾンドットコムから仕入れておいた LANDSCAPE OF ARCHITECTURES DVD-BOX 世界の建築鑑賞 なんていう3枚組のDVDを見ることにした。 1巻が2時間ほどするため、まとまった時間がなくて、なかなか見る機会がなかったのだ。 

何気なく見だしたら、その映像の美しさとフランス語による解説のリズムの心地よさに思わず眠りそうになりながらも、 内容の濃さと共に建築家がどのような発想と経緯でその建築を実現したのかが丁寧に解説されてあったので、どんどん引き込まれていき、 ほんとうに見入ってしまった。 

こんな映像を見ながら皆で話し合う・・・。そんな建築の教育があっても良いと思った。建築を教え、 伝えるという学校のプログラムには疑問だらけだった。当時、私は大学の建築の授業を受けて、建築への興味がどんどん失せていったのだった。 勿論、教育のせいだけではなく、当時の私の内面世界がそうさせたのだと思うのだが・・・・。 

オリンピックも始まった。いきなり、ヤワラちゃんが金メダルを取り、ご主人が客席から満面の笑顔と涙で声をかける。 それに涙で答えるヤワラちゃん・・・・。そんな場面に心が動いた。卓球の愛ちゃんが得点が決まった時に握り拳と共に発声する「ヤァー」とも 「ミャァー」とも判別のつかない声・・・・それにも不思議な印象を持った。そんなテレビを繰り返し見たりしながら、息子とのゲーム・ 建築のDVD・JAZZのCD・家族との食事で二日間が過ぎた。 

次男が「海は・海は」と卓球の愛ちゃんのあの発声にも似た調子で呪文のように唱えだした。私の「旅」への禁断症状もでてきた。長男が、 次男が旅行に行けないのは可哀想だから旅行に出かけろ。と泣けるようなことをいう。奥方は旅行に反対していたが、私の禁断症状も加味してか、 一泊二日でキャンプに行くことになった。長男と何度も行った能登大島海岸海水浴場へと。 

一日目は快晴だった。夜、潮騒の砂浜で花火をした。満天の星空だった。それにもかかわらず、二日目は朝から雨が降った。 いまの様々な状況を加味して、早々に引き上げてお風呂屋さんにいくことになった。そして、そこのサウナで、オリンピックを見たのだった・・・ ・・。 

旅行を終えて帰ってみると、な~んだ、長男は勉強そっちのけで、友達と外で遊んでいたのだった。「親の心子知らず」なんて、 親になってはじめてわかるものだなぁ。私も似たようなことをしてきたのだと・・・・。 自分がしてきたことへの自戒も含めて悶々とした気持ちになった。それでも子供にとっては、それはそれで良いのだと思う。 全ては自分にふりかかり、自分で解決していくものなのだと。そして悶々とした親の気持ちは、親自身の心の問題として、 愛情として解決していくものなんだと・・・・。 

投稿者 木村貴一 : 2004年08月20日 21:14 « デザイン | メイン | 転ばぬ先の杖 »


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