2006年06月04日

五島列島の旅(その6-1)

津和崎~1

海岸べりというよりは、曲がりくねった山あいの道をとろとろと走って、ようやくたどり着いた上五島最北端に位置する津和崎灯台は、 あたり一面を椿で囲まれた、眺めの良い岬だった。 RIMG294なぜが、不思議と一輪だけ、ポツンと取り残されたように椿の花が咲いていた。きっと、 椿が咲き乱れる季節は美しいのだろうなぁ・・・・と想像していると、突然、黒澤明の映画、椿三十郎のクライマックスの場面で、 切り落とされた椿が水路からいっぱいに流れてくるシーンを思い出した。そんな、とりとめのない脳味噌を眺めながら、 すぐ対岸に見える野崎島をなにげなく、眺めた。真っ青な海と空の間に細長い姿で緑に包まれた島が浮いていた。 野首天主堂という教会があるらしい。 そうだなぁ、きっと、野首という、なんともおどおどしい名前が椿と結びついて、 侍の映画のワンシーンの記憶を呼び覚ましたのかなぁ・・・

RIMG303そういえば、あの島の段々畑の中にポツンと教会が建っている印象的な写真があったなぁ・・・ 。意外とすぐ近くだなぁ・・・。行きたいなぁ・・・。と、まったく、脳天気な状態だった。

展望台から駐車場に下りる階段の景色が心地良かったので、階段を降りるという、その動作が楽しくおもえた。駐車場に着くと、 設置されてあった水飲みで、水を飲んで喉を潤した。突然、奥方が今朝、歯磨きをするのを忘れたんとちゃう・・・、なんて、 突拍子もなく言い出した。それで、家族3人で、海に向かって歯磨きをしたのだ。確かに、おかしな家族の光景だったと思う。 その写真を掲載しようかなぁとも考えたが、そんな、格好悪い写真、絶対、載せんといてぇーと、大阪弁で猛反対にあったので、 写真は止めとくことにしよう。

きっと、この陽気のせいだったと思う。津和崎港にある釣り船屋さんの前に車を止めて聞いてみることにした。 「対岸の野﨑島に行けますか」「10分ほどで行けるよ」「いくら掛かりますか」「片道1万円」「えー、高いね」「ガソリン代もかかるし」 「それだけの値打ちのあるところ?」と尋ねた。「まぁ、行ってみる価値は十分あるとおもうよ」と船屋の感じの良い兄ちゃんが答えた。片道、 といっても、あそこに置いてきぼりじゃぁ困るよな。往復で、2万円とハッキリ言てよね。なんておもいながら、車に戻って、 家族と相談することにした。息子は猛反対した。「そんなとこ、行かへんでぇー」と、朝の公園の一件が尾を引いているようだった。「そのお金、 自分で出すんやったら、行ってもええよ。」と現実的な奥方。

片道10分1万円、大阪から東京まで行ける値段だ。そんなに値打ちがあったのかどうか、 そのコストパフォーマンスは未だに疑問も残るのだが、それにしても、今回の旅行で、最も印象的な2時間の小旅行であった。

投稿者 木村貴一 : 2006年06月04日 08:05 « 五島列島の旅(その7)完 | メイン | 五島列島の旅(その6ー2) »


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