2006年10月22日

百貨店

カッターシャツのお仕立て券を贈答品として頂戴していて、それを交換する機会がなかなか持てなかった。百貨店まで行くのが、 ちょっとだけ、億劫だというのもあるのだが、なんというのかなぁ・・・・、休日に百貨店に行くのにも、それなりに、「勇気」がいるんだなぁ・ ・・・・。

アウトドアーに行きたいとも思った。ここ何回か奈良で仕事をしていたので、のどかな奈良の光景。そうだなぁ・・・、 明日香とか山辺の道なんていうのも、のどかでよさそうで、そうそう、以前にINAXの企画展で、 山辺の道にある土の小屋を写した写真があって、そんなの見るのもええのかなぁ・・・。なんて思いながら、息子にハイキングでもどおーって、 聞いてみたら、「僕はサッカーの試合に行くワーっ」と、か~るく、ふられた。

そんなわけで、「ええ加減に、百貨店に行かなアカンでぇー」という、奥方の猛烈なるプレッシャーを感じたので、 草や木々や山々や土の香りの、のどかな光景を見に行ったつもりの「心」で、人と物に溢れた百貨店に行くことした。 夫婦二人だけで百貨店に行くことなど滅多にない。

難波の高島屋に行った。なぜか、着くなりお腹が空いたと思った。そういえば、朝ご飯を食べてなかったけ。いきなり、 上の階にある食堂街に向かった。百貨店で食事をすることなどほとんどない。「福喜鮨」という屋号を見つけた時、祖父の事を思い出した。 そうそう、死ぬ前まで、お昼ご飯を食べに、高島屋の福喜鮨や大丸の吉兆によく行っていたなぁ・・・。それが、楽しみだったようだ。 そういやぁ、私は一緒に一度も食べに行ったことはなかったなぁ・・・。

そうそう、小さい頃、祖父は、1、2ヶ月に一度ほど、おもちゃを買いに百貨店に連れて行ってくれたっけ。今から思えば、子供に、 ひとりで、おもちゃを選ばせて、その間、1時間近くも、な~にも言わず、じ~っと、ベンチでタバコを吸って待ってくれていた。「もの」 の溢れた中で、「迷い」を繰り返して、「自分で決めて選ぶ」という、そういう事を教えるための教育でもあったのだなぁ・・・・と、 いまになって、ようやくわかる。自分の子供には、そんな事してないなぁ・・・・。

百貨店の福喜鮨で食べるのは初めてだった。中に入ると、いっぱいだった。流石に、年配者が多い。 祖父も同じような雰囲気で食べていたのだなぁ・・・・。店内は、しゃべり声はするものの、静けさがあった。それは、 カウンターの前で鮨を握る職人さんの「びしい~とした」雰囲気がそうさせているのだと思う。奥方に「うちの会社もこんな雰囲気かねぇ・・・」 と聞いたら、「ぜ~んぜん違うワー。まだまだやねぇ・・・・」とかる~く流された。私の話より、どうみても、 鮨にしか意識は向いていなかった。私が職人さんの「姿勢」に見とれている隙に、と~っくに食べ終えていた。

確かに、回転寿司のタ・マ・ゴとは全くちがう、タマゴ鮨だった。味に気品があるのだろうなぁ・・。そういうのは、 いったい何からうまれろのだろう・・・。素材だけなのだろうか・・・。技術だけなのだろうか・・・・。 ものづくりのハートが違うからなのだろうか・・・・。・・・なんていう考えが、ほんの数秒間だけ駆けめぐったが、「味」 以外の何か別のものも一緒に食べさせてもらったなぁという、満足感が、ぶつくさと言う心を一掃した。そして、私が、若いときには、 否定的に捉えていた、祖父の百貨店の中の老舗日本料理店好きという、その感覚を、それはそれで、結構、ええもんやなぁ・・・と、 そのハートの一端を共有できた気がした。

そうそう、シャツの券の話だ。実は、2枚たまっていた。1枚は難波のT百貨店、もう一枚は上六のK百貨店。 1日に2カ所もまわる事になってしまた。それが、全くそれぞれの雰囲気と対応の仕方が違うのが面白かった。確かにT百貨店はオシャレだった。 担当のおじさんもびし~っとしていた。綺麗に整理された冊子の写真を見ながらシステマチックに、丁寧な説明だった。寸法のあたり方というか、 メジャーの当て方がプロぽかった。K百貨店が、そうじゃぁ、なかった。というわけではないのだけれど、2つを比べると、 不思議にそんな感じがした。おそらく、K百貨店だけしか行かなかったら、そこまでは、思わなかったのだろうなぁ・・・。まぁ、 こんなもんかなぁ・・・・って。

T百貨店では首まわり39.5といわれたのに、K百貨店では41だった。わずか2時間の間で1. 5センチも首が伸びるわけでもないのになぁ・・・・・。それと、店の照明の仕方が全く違っていた。K百貨店ではいまだに、 天井の照明に細長~い蛍光灯がずらりと並んでいた。どちらかといえば、白けた光の店内だった。T百貨店はダイクロハロゲンのまばゆい光で、 店内が輝いていた。気のせいか、店員の女性の顔色も違うように見えた。

この2軒の百貨店を同時に回ったことなどなかったので、ひとの持つ印象とは不思議なものだなぁ・・・と思った。いままで、 見慣れた百貨店も、私という人間と二つの百貨店の結びつきと、その組み合わせが変わることで、こうも様々な印象を持つのだなぁ・・・・と。 まぁ、どちらが、良くて悪くて好きで嫌いでは脇においといて、同じように、うちの工務店もお客様から見れば、他の工務店と比べられて、 様々な印象を受け取られているのだろうなぁ・・・・。いやぁ・・・今日は身が(首が)引き締まる思いがしたなぁ・・・・。

 

投稿者 木村貴一 : 2006年10月22日 23:28 « モノ | メイン | ヤングダイクス »


Share (facebook)