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2010年05月30日

脳裏

もう6月。お正月から、あっという間。そう感じるのは、きっと年取ったせいなのだ。今日は、とってもエエ日和りで、でも、朝は少々肌寒むかった。そういえば、ここ数日、「寒むっ」とつぶやいた瞬間が何度かあったことを思い出した。

誰にでも断片的ではあるものの、目の前の光景とは別に、脳裏で映像が流れている瞬間があるとおもう。それが、目の前の光景と関連性があるのかないのかよく理解できないことも多いが、いまとここの私にとっては、今日の出来事であったり、今週の出来事であったり、ゴールデンウィークの出来事であったりで、脳というやつはおもろいやっちゃなぁ。とおもう。

今日は、施工をさせて頂いた清見原神社の合祀100周年祭というお祭りがあった。四ヶ所に散らばっていた神社が1カ所に集まってから100年が経過するらしい。ついでではあるが、清見原神社のいわれは・・・・・

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天武天皇が皇居であった大和の国飛鳥浄見原宮から、難波即ち今の大阪に舎人親王多古麿等を従えられて、行幸遊ばした際、当所に御休憩遊ばしたと伝えられている。 当時この所は高地で樹木が鬱蒼と茂り見晴らしがよく、住の江の海(今の住吉)に浮かぶ白帆が見え憩うには格好の場所であったようである。ここにしばし御休憩遊ばした天皇は「吉野はどこのあたりになるであろうか」と吉野の方をかえり見られたというので、今に「吉野見」の地名(小路二丁目三番地吉野見通りあたり)を存している。

と書いてあって、それは、意外にも古い歴史なわけで、いまいちど、あらためて大阪の歴史を見つめ直してみようという気分にさせられる。神社の仕事に携われた事は、うちの若い大工にとっては、無節の吉野檜を扱う機会に恵まれて、平田雅哉の一番弟子の沖棟梁のもと、道具の手入れから、材料の扱い方、大工としての心構えまで含めて、一から見つめ直す機会に恵まれたことが、なによりも有り難い事であった。

こんな事を書いていて、突然脳裏に浮かんだ映像は、お稚児さんとだんじりの記念撮影。カメラマンが、大きな声で、「さぁいきますよ!」と声をかけると、並んで整列していたお子さんのひとりが、その掛け声を駆けっこの合図とおもって、ママの方へ向かって一目散に走りだした。それを追いかける宮司さん、その光景が、「いとおかし」だった。

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撮影が終わって、宮司さんを補佐していた神主さんと挨拶を交わす。「このお稚児さんたちが、大きくなって、10年後、20年後、この地球がどうなっているのか、この国がどうなっっているのか、ほんとうに心配してるんです」と真顔で語る。

「かみしも」を着た誰かが、「次の100年後に、また、お会いしましょう」と冗談を言うと、「その時、わしは180歳やな」ときりかえした。そんなおやじギャグと神主さんの言葉に、さしたる深い関連性があるともおもえないが、言葉の連想によって、脳裏は、地球の、国の、会社の、この次の100年ビジョンというものを見たがっていた。きっとビジョンをもつための議論が必要な時なのだろう・・・・・。

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うちの会社の見積書の表紙を印刷してくれている、ハタナカさんに、祭りで出会う。「昨日、工場に来て、撮影してくれて、おおきに」と言われ、そうそう、そう言えばと昨日のことを思い出した。その瞬間は、日本対イングランド戦で、イングランドがPKをはずした瞬間でもあって、脳内では、映像がダブって混乱していた。

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うちの会社の見積書は、いまだにB5サイズで提出していて、その表紙は、会社からひと筋向こうの、家内工業的な工場で、活版印刷される。「もう活版印刷しているところなんて、なくなってきたし、あと継ぐ、若い子もいてへんし・・・」とつぶやく。そのつぶやきを聞いて、その工場を撮影しておきたいと急に思い立ち、強引に押しかけた。

「ものづくり」のエエ感じの空気があって、でも、その需要の少なくなっていく寂しい空気も漂っていて、この雰囲気に接すると、これからの社会はどうなればエエのかね・・・と、おもった。この工場の映像が、さきほどの神主さんの言葉を聴いている脳裏で、なぜか流れていたのだ・・・・。

最近の糸井重里さんのtweetに「そうか。夜中に気がついた。iPadなどが常識になっていくときに、「書」や「紙」への「揺り戻し」がくる、というより「書」や「紙」が<憧れ>になっていくんだ。いまよりもさらに、尊敬すべき嗜みとしてとらえられてね。丈夫なプリント合板と天然の木材との関係みたいなものかもぷう〜。」とあった・・・・。

神社で出会う何人かと会話を交わすと、その中のひとりが、「大企業だけが良くなってもしゃぁないで。やっぱり、小さな企業がぎょうさん良くなっていかんと、日本の国は良くなれへんとおもうわ」とやっぱり真顔で語りかけられた。

そうそう、これを書いているうちに、気がついたら、イングランドとの試合は,敗戦していて、相手の直接のゴールはなしで、オウンゴールが二つもあって敗戦するところに、日本の今の政治状況まで反映しているのだ。とこじつけたくなる気分。そのテレビ映像と撮影したデジカメの写真と脳裏の映像など、様々な映像が混迷しているのが、いまの「私」の状況。

というわけで、今日という時間が押し迫る。今日のブログは、まったくもって脈絡のないブログになってしまい、それは、おそらく、世間に漂っている「混迷」とおなじような何かが、私のなかのどこかにあったからだろう。こんな時は、ふかふかの布団で、グッドナイトだね。

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2010年05月23日

雨が降っている。日曜日は晴天の日が多かっただけに、しっとりした気分。

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週始め、リフォーム工事の写真撮影があって、覗く。中古住宅を購入することから、日住サービスのナリタさんと協働しながらお手伝いをした。新築も考慮したものの、最終的にはコンクリートの中古住宅に出会い、購入する事を一緒に決断し、全面リフォームをする。

いま、世の中では、構造と断熱は社会的に求められている事でもあって、工事中には、構造設計のタハラさんに、現場に足を運んでもらい、アドバイスを受け、構造的な処理をする。断熱は外断熱にするかどうか、いろいろと検討したが、隣地との空き寸法やコストの問題を考慮してウレタン吹き付けとした。

自然素材という言葉が流行りだしたのは、もう何年前の事か・・・。床は無垢の板材を使用する事がほとんどだが、タイルという希望もそれなりにあって、大阪ガスの床暖房を併用しながら、ちょくちょくタイルの床も施工する。壁と天井は、漆喰ペンキを使っていて、自然素材といわれるジャンルの素材。収納は、うちの大工さん達が、ランバーコアー材で造ってくれて、設計のタナカくんが、窓との関係性や、電子ピアノや液晶テレビやパソコンや本やその他ゴチャゴチャもんを考慮して設計した。その棚を今回は白に着色する。キッチンはモーリーショップ。

どんな収納を造るのか、テレビとか、パソコンとか、本とか、ゴチャゴチャしたものとか。最近は食卓のテーブルが、「食卓」を越えて「居卓」であったり「勉卓」であったり「パソ卓」となることが多い。ますますテーブルの存在感が高まる。お客さんとの会話もそのテーブルでする時が大半。何よりも、子供の勉強が、勉強机よりも、そのテーブルでする事が圧倒的に多いようだ。とおもう。

うちの子も、キッチンに付属するテーブルが勉強机で、それ以外で勉強した姿をほとんど見ない。だいたい近頃は塾が勉強の場なんだ。それで、ダイニングテーブルの廻りには子供の本や文房具や、何が入っているのかよくわからへんゴチャゴチャもんを詰め込んだワゴンなどが溢れ出していて・・・・・。前置きが長くなったが、そんな、生活の一部になっている、ゴチャゴチャもんも含めた収納する棚類をどうつくるのか?棚の機能とそのデザイン性はますます重要になったきた・・・・。もはや空間を構成する一部。

DSC06897昨日、深夜に訪れたのが、弊社で施工したコトバノイエの設計者、ヤベさんと、そのコトバノイエの施主のカトウさんが協働したブックストアーで、そのオープンニングパーティーがあった。 本の全てが面陳。カッコエエ。

棚と背景の塗装は設計のヤベさんのセルフビルド。背景が黒塗りで、それが、写真では判別できないとおもうけれど、その下地が、ガタガタで、ALCであったりブロックであったりモルタルであったり。その上に黒の塗料をぬっているので、威圧感の黒とならず、素材感があって、抑揚のある黒になっていて、カッコエエ。何よりも面陳の本が、カッコ良く見える。それに、ヘタウマの棚が、壁に張り付いている。壁からの出っ張りの微妙な寸法や棚の組み方や窓との関係性は流石、プロ中のプロ。でも施工はヘタウマ。いやいや、けっして、ヘタヘタとは言わない・・・・。「あじ」があるというプロの大工ではマネのできない領域。中途半端なプロフェッショナリズムな大工よりエエのかも。

キムラさん、黒の壁とランバーむき出しの棚のコンビ。マネしたらアカンでぇ。とヤベ先生が言う。いやいや、隣国のようなデザインの搾取はしないけれど、ちゃんと敬畏を表して、引用致しますから・・・・と。言ったかどうかは、深夜なので、忘れた。

それにしても、とにもかくにも、施主の方や設計者や大工さんと一緒になって、「棚」をつくりたいものだね・・。機能的な棚。カッコエエ棚。倒れない棚。便利な棚。本棚。食器棚。パソコン棚。ゴチャゴチャもん棚。テレビ棚。飾り棚。数寄屋な棚。桂離宮な棚。ルイビトンな棚。愛のある棚・・・・。棚。

日本で最初にシステムキッチンを造ったのがモーリーショップなのだそうだ。間違った情報ならゴメンナサイ。そのモーリーショップとは、それなりにエエ関係を保ちながら仕事をしているのだけれど、その関係性のなかで、建物を見に行く案件があって、京都まで赴くと、それは、それは、見事な数寄屋の家だった。最近は、数寄屋という言葉をしらない人が多いのかも知れないね。その座敷や玄関や居間は、「木」というものを「線」的にプロの技術とセンスで、最高級に組み合わせてあった。柱や長押には大面がとってあって、そのセンスと技術にしびれた。iphoneにも、その微妙な角度の面が取られたデザインに、何か通じるものがあるかもしれない。そのデザインが好き嫌いかは別にしてのこと。その家が何度も繰り返し見ていた会社で所蔵している京の数寄屋という本にある住宅だったので、いっそ驚く。

会社に帰って、その本を眺めながら、たまたま会社に立ち寄った大工のササキくんと、その本を見せながらその家の話をする。一生に一回でエエですから、こんな家の大工仕事をしたいですワ。やっぱり大面をセンス良く取れるのが大工にとっての最高級の仕事やとおもいますワ。大面をとるのは勇気がいりますワ。面をとると、あちこちの仕口がタイヘンムツカシクナリマスカラネ。と。目をキラキラ輝かせながら語る。

いづれにしても、棚の設計者や数寄屋の大工さんが、「面」や「線」で、悩み、葛藤した、その痕跡に触れると、こちらも、ものづくりへの、あらたなエネルギーを授かり、有り難くおもう。とっても感謝。

話が、横道にそれてしまった。そのリフォームの写真撮影は無事終わった。考えて見れば、中古住宅探しからお手伝いしながら、その決断のアドバイスをし、ライフスタイルをお聞きしながら、素材や棚などの設計を一緒に悩み、施工という、もの造りの過程を共有し、引き渡しという日を迎える。時には写真撮影もある。引き渡し日はメンテナンスというあらたなお付き合いが始まる日でもあって、私たち工務店にとっては、業者の器具説明などを聞きながら、無事に家のお引き渡しをできるのが、何よりもの喜び・・・・・。そして、雨は、一日中降り続く。

 

追伸
そうそう、土地や中古住宅を一緒に探すのは、なかなかムツカシイことで、それは「縁」という、得体の知れない波をとらえ、その波に上手く乗れるかどうか、一緒に流れていけるかどうかなのだろう。

ここ数年、土地探しからお手伝いしてきたが、いまだに、その波待ちをしている人がいっぱいいて、いい波にあたらない人や、決断しきれない人、どうすれば、その波を発見できるのか、その波をとらえ、乗りこなせるのかよくわからいままで、もどかしい人・・・・・。それが、土地や中古住宅を探しているその人たちだけでなく、「私」も同じようにもどかしく、おもう。きっと、なんらかの「縁」を呼び込む方法があるのだろう・・・・・。

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2010年05月16日

ゆったりと過ごす。

最高にエエ季節。青空とさわやかな風。家の窓を全開にして過ごす、この心地良さ・・。ゴールデンウィークに「旅」をして、「旅」の持つ麻薬のようなあの魅力。それはそれで捨てがたいけれど、奥方が旅から帰りついて、いつものように言う決め台詞「やっぱり我が家が一番」を、きっと多くの人が、そう感じながら、ゆったりと過ごしたのだろう・・・・・。

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ゆっ たりと、自由に、くつろぐ・・・・。と、まぁ、自分の家に対する不満点なども、少々出てきて、こうしたいなぁ・・・とか、ああしたいなぁ・・・とか、自分にとっての居心地の良さそうな居場所を造りたくなってくるものだな。これって、「私」の性なのかね、いや人間のもつ「サガ」なのかね。

設備機器を交換したり、家具を買いそろえたりするだけでなく、自分たちのライフスタイルにあった、それぞれにとっての居心地の良い家づくりには、是非、木村工務店のスタッフや、職人さんや、私と一緒に、家づくりをしましょう!。などと、宣伝もたまには・・・・・よろしくおねがいします。

さて、朝起きて、朝風呂に入って、デッキのベンチに座りながら、コンピュータをつけ、朝刊を読み、パンと珈琲を飲む。さわやかな気候の時は、デッキで、くつろぐのは確かに快適。それも家族で揃って食べるのも確かに良いが、それぞれが、てんでばらばらの場所で、それぞれの朝食を食べるのも時には、とってもエエ感じ。私はデッキ。奥方はキッチン。息子は食卓。それぞれの存在感を感じながらの「ひとり」も良い。

暫くして、薄暗いコーナーのソファーにいって、ごろつきながら、本を読む。個人的には、少々薄暗いところで、本を読むのが好き。「大工道具の歴史」という本が、妙な縁で、舞い込んできて、これを、ゴールデンウィークのお供に連れ立ったのだが、結局、読むタイミングを逃し、いまここで、思い出したように、続きを読み出す。

「・・・・・室町幕府成立のころから将軍家大工とよばれる大工の最高を位にあって、しかも広い視野と教養人としての知識・感性を要求される人間があらわれてくる。そうしてやがて彼らは、大工としての実際の技術から離れて将軍家の芸術顧問のような立場に立つようになった。」

「それに代わって実際の技術上の指導者として棟梁という職種が登場し ・・・・・・・・ きびしく洗練された寸法比例からは、彼らがいかに高度な審美眼をそなえていたかがうかがえる。私は将軍家のパトロネージのもとに成立したこの御大工から、日本におけるアーキテクト(建築家)の発生をみるのであるが、・・・・・」

なんて話を、なるほど、と感心しながらも、眠たくなる。これもいつものことで、しばしソファからずり落ちながら、15分ほどウトウトする。これが、また、実に心地エエのだね。

お昼は、軽く、たこ焼きでも食す。近くにできた、若い兄ちゃんが作る、ちょっと工夫したたこ焼き。家から5分ほどの廻りに、たこ焼き屋さんやお好み焼き屋さんが、10件以上は軽くあって、そこで店を出すのだから、それなりのチャレンジャーなんだ・・・・・・。

昼だというのに、それに、こんなエエ天気でエエ気候だというのに、どこにも行きたくない気分。家で楽しみたい。テレビも見たくない。が、「たかじんのそこまで言って委員会」だけは、なぜか見てしまう。日曜日のこんな時間帯に、楽しみにテレビを見てしまうわけで、録画までして見るのはこれぐらいかね。

テレビが終わって、音楽でも掛けてみるが、音も聞きたくない気分。ただただ日が暮れていくのを無為に過ごす。そんな訳で、夕食をとって、龍馬伝だけは見て、このブログを書き出した。それで、ここまで、書いて、「ゆったりと過す」と、タイトルを決めようとしたところで、突然、ゴールデンウィークに宿泊した箱根のFホテルでの行き届いた接客とホスピタリティーを思い出した。確かに、企業としても見習うべきものを感じた。

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ホテルにチェックインし、暫し、部屋でくつろぎ、日本で最初にできたホテルのプールとやらに入って、泳ぐ。それから、お風呂に入りに行く。浴衣でうろうろできるようなホテルでもなく、もちろん、靴を履いて行く。

ところが、お風呂から出ようとすると、なんと、私の靴がない・・・!誰かが間違ったらしい・・・・・。それで、フロントに電話をして、スリッパを持ってきてもらい、部屋に戻る。暫くゴロゴロして待つが、靴が見つかったという電話もない。このまま、朝まで待つのか・・。食事の時間も迫る。食事も浴衣で行くようなレストランでなく・・・。ひとりだけ部屋のスリッパで行くのだな・・・・。と、流石に、ちょっと、カッコ悪いかなと思い始めた。

それで、フロントに電話をすると、2、3回のやりとりがあって、車で、靴を買いに近くのホームセンターまで、一緒に行きましょう。靴代は出しますので、と言う。もう履ければ何でもエエですよ。と言ったのだが、ホテルの人も困ってそうだった。それでここはひとつ、ゆっくりとくつろぎたいという、そんな気持ちは捨てて、息子も連れだって、靴を買いに行くことに「決意」した。

息子はなんで、付いていかなアカンのぉとふて腐れていたが、きっと凄いクラシックカーに乗って靴を買いに行けるのだ・・・・と適当な事を言って説き伏せた。まぁ、こんなヘンな経験はできないし、それに、思い出の運動靴になりそう・・・。この一部終始を奥方は腹を抱えて笑って見ていた。それはまるで、三谷幸喜の映画の一場面のようだったのだろう。窓からその一部終始をビデオ映像に収めようとしていたくらいだった・・・・・。

結末は、あっけなかった。エレベーターでロビー階に降りると、その前で、間違った私の靴を履いた人が、歩きにくそうにしながら、私が、部屋のスリッパ姿で廊下を歩いている様子を見て、声をかけてきた。「あのぉ・・・。ひょっとして・・・・。・・・・。普段、お風呂には靴で行かないものですから間違ってしまって・・・と。・・・」私も、普段、靴で、お風呂には行かないですけど・・・・などとは、決して突っ込まなかった。

まぁ、フロントまで、おかしな二人のコンビで歩き、靴を交換してもらい、一件落着する。三谷幸喜のような劇的なストーリー展開もなく、あっけない幕切れだった。もっとも残念がっていたのは、窓から、ホテルの玄関の様子をわくわくしながら見ていた、奥方だったとおもう。その姿を想像した方がオモロイかも・・・・。

そんな、わけで、接客とか、ホスピタリティーとか、対応とか、そういうのは、とっても、難しいものだなぁ・・・・とあらためておもう。ホテルはつかの間ではあるものの、ゆったりと過ごす時間と空間とホスピタリティーのような「何か」を提供し、それに共感する。工務店も、ゆったりと過ごせる家を造ると共に、そういうホスピタリティーのような「何か」も求められている時代だな。とおもう。

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2010年05月09日

旅の出合い(北斎富嶽三十六景 甲州 )

今朝、起きて、新聞を見ると、諏訪の春宮の御柱祭りで、ワイヤーが切れて人命が・・・という記事が、目に飛び込んできた。このゴールデンウィークの最初の目的地は諏訪で、5月1日の夜中に出発し、中央道のサービスエリアで仮眠をして、5月2日の早朝の最初の到着場所がその春宮だった。

駐車場に車を止めると、祭りの準備で、鳶職らしき人たちが沢山集まっていた。その姿を横目で眺めながら、鳥居の手前にあった手水で手を清め、神殿に向かうと大きな注連縄があって、その横を通り抜けると、本殿らしき、檜皮葺きの独特の個性的なデザインの神殿に出会う。

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お賽銭を入れ、2礼2拍手1礼をし、お参りをする。後から、いかにも、「ぼうしん」という雰囲気の鳶職風のおっちゃんが、こなれた身のこなしで、お参りをした後、グリーンの養生ネットが張ってある側に向かい、佇んで、何かの段取りをしだした。

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御柱祭の事を聞くために、近寄って、声を掛ける。「どこに行けば見ることが出来ますか」と聞くと、「今日は、本宮の方で里曳きをやっていて、ここ春宮と秋宮は、来週が本番。私は、7年に一度のこの祭りがこれで、11回目で、いまや、ここの最長老。もう84歳になった。これから、柱を建てる場所を掘る段取りをしているところ。もう少し、柱を建てる位置を移動しようとおもってるの。あとで、若いもんがいっぱいやってくるので、その準備。やっぱり、柱を建てるのを見るのが、一番だけれど、ま、里曳きもよいわな。本宮の方は角が二本建ってるからね。こっちは、角がないの。・・・・・・」「あそこに、ワイヤーを張って建てるの・・・・・」「写真撮ってもかまわんよ。テレビにも映ったりしてるからね。・・・・・・」「気をつけてかんばって下さい・・・・」「いい旅をね・・・・」なんていう会話をして別れた。

旅の初日の偶然のタイミングで、心がさわやかになった・・・・・。その、春宮で事故があったというのが、今朝のニュース。それを新聞で、私と一緒に見た奥方の第一声は、「あのおっちゃん、どうしてんるんやろ・・・・・。」私の脳裏にも、あの笑顔と、あの体つきと、あの身のこなしが、浮かんだ・・・・・。あの「祭り」で味わった歓喜も蘇ったが、何とも言えない、怖さも忍び寄った・・・・・。それが、旅の出合いというものだな・・・・・・・。

そうそう、去年と同じなら、富士の見えない富嶽36景北斎の旅は25年ぶりとやらのゴールデンウィークの晴天に恵まれて、奇跡的に富士山が見えた。東海道をお上りさんするのではなく、中山道をお上りしたのが良かったのだろう・・・・。息子への富士の見えない富士の旅という汚名も少し返上し、あらためて富士の美しさとその迫力に出会った。

写真の精度と腕前は相変わらずエエ加減だが、諏訪湖以外では、よく見ると、富士山が映っているわけで、この写真のよしあしはご勘弁頂くとして、その8カ所の絵が持つ、「場所性」だけは、何となく、肌で感じる事ができた・・・・・。

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↑ 諏訪湖にて
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↑ 見延山の手間で渋滞に巻き込まれて・・・見延山まで行かず途中で撮影。
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↑ 南アルプス市の富士川付近で、どこかわからないので、もう諦めて、ここらで、撮影。
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↑ 石和のフルーツ園から撮影する。iphoneにも登録しておいたけど・・・・。
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↑ 御坂峠と川口湖から撮影。きっと、これ、北斎流の合成写真で、洒落だね。
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↑ 山中湖付近の別荘地から撮影。富士のデフォルメの仕方が凄い。朝焼け見たいね。
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↑ 籠坂峠のとある場所で、こじつけで撮影。
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↑ 箱根の美術館の駐車場から苦し紛れに撮影。

北斎を出汁にしながら、下諏訪温泉、縄文の湯、ほったらかしの湯、箱根の湯など4つほどの温泉に浸かり、諏訪大社の春宮、秋宮、本宮、前宮や箱根神社と5つほどの神社にお参りし、御柱祭と出合い、吉村順三や藤森先生や伊東豊雄やクラシックな建築と遭遇し、縄文のアイドルには出会えなかったけれど、その縄文「場」をほんの少し体感し、それに、鰻や蕎麦や鳥もつ煮やフランス料理と、ちょっとだけグルメした。意図した出合もあるけれど、半分は、偶然の出合い。

↓神社にお参り。
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↓祭りの周辺。静寂と木遣りとブラスバンド。
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↓木遣りとともに黄色い集団が迫り通り過ぎる。男気を感じたと奥方は表現した。感激!
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↓意図的だったり偶然だったりして出会った建築
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↓尖石遺跡・山梨県立博物館・釈迦堂遺跡
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↓富士山・八ヶ岳
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↓ 温泉・グルメ?
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さまざまなリズムが複層的に組み合わされるポリフォニーな旅をしてみたい。というのが、今回のテーマだったかどうかは、旅行が終わってからおもう事で、とにかく、「私」は、想定外の「出合い」と新鮮な「印象」を持つことを切望し、流れ、漂いたがっていたに違いない・・・・・。

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2010年05月02日

さぁ!さぁ!さぁ!さぁ!

さぁ、ゴールデンウィークが始まり、木村工務店では5月2日(日)~5月5日(水)まで、休暇を頂戴しているのだけれど、なかには、休み中も動いている現場が一件だけあって、その現場監督と職人さんには、たいへん有り難くおもうと共に、こうして、休暇をとっている私事に、少々の気後れのようなものを感じていて、そんな訳で、「無事を事とする」という老子の言葉をまさに、いま思い出した。現場も遊びに出掛けた社員もそれに、これを読んでくれている方々や私も含めて、無事を最大の出来事としたゴールデンウィークであるように祈りたい・・・・。

そうそう、「私」は、まず、諏訪に行くことにした。それは、昨年のゴールデンウィークの北斎の旅の続きをしようと考えた訳であって、諏訪から甲州の北斎を辿って、箱根まで行こうと計画しているという訳。いやいや、実は、さしたる旅の目的があるわけでもなく、ほんとうのところは、ただただ「漂いたい」のだけれど、それとなく、旅としての、エエカッコをして、目的をひねりだしたというのが、本音だとおもう・・・・・。

それで、出発して間もなく、車中で、今度の旅行、どうおもう。と聞くと、奥方は「仕方なしにあなたのばかげたことに付き合うのが半分以上・・・。まぁ、楽しくないわけではない・・・けどね。」と、煮え切らん返事。息子は、「富士山が全然見えへん富士の旅やからな」と全く、的を得た応え。

013shinshusuwako そんな訳で、今回も、諏訪で描かれた北斎のこの光景の富士に出会える事がスタート地点だったのだけれど、いつものように、もはや「私の旅」では、富士山が見えるハズがないのだった・・・・・。

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ところが、こじつけで、行く事に決めた 諏訪の町では、7年に1度の「御柱祭」の真っ最中で、町が、独特のムードに包まれていた。それに、ちょうど、「里曳き」のその祭りに出くわし、これが、何ともいえない、活気と、おごそかな魅力があって、まさしく魅了されてしまった。移動はせず、その場から離れられなくなって、何だか、すっかり諏訪の町が好きになって・・・・・。

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「木」というもに対する敬畏。町ぐるみでの一致団結。木遣り、活気と静けさ。勇壮さ。荘厳さ。祭りというものの原点を見たような気がした・・・・。 「さぁ!さぁ!さぁ!さぁ!」という皆で発するその掛け声が、いまだに耳元に残っている・・・・・・。

祭りから、エエ活気をもらって、それなりに元気なのだけれど、体はたいへん疲れているような気配・・・・。そんなわけで、今日は、もう、ここらで、ぐっすりと寝たいとおもう。皆さん、エエ、ゴールデンウィークを!

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