2011年12月11日

心が最も強く動かされたもの

朝6時頃、外は真っ暗。ランニングをするために走り出す。西向きの道路に出たら、目の前に、見事な大きな月が出現して、ちょっと魅とれる。脳の中では、走るのを止めて、写真でも撮ろうかな。とか、そうそう昨夜は皆既月食だったな。とか、「月夜の朝」だな。という、妙なコトバが脳の中を巡っていて、ランニング中の、脳内に浮かんだコトバや感情を記録できる装置があれば、一度、記録し再生してみたいものだなぁ・・・・。

木村 貴一
Just completed a 10.87 km run with RunKeeper

12月7日水曜日に中之島の中央公会堂の小会議室で、「第11回関西建築家大賞表彰&トークイベント」というのがあって、ATERIA ASHの矢田さんがその大賞を受賞し、弊社で施工したES house-02がその受賞作品のひとつに選ばれた。
collaboretion-top-EShouse02
式場では、審査建築家の香山壽夫さんが、講評を述べられて、印象的だったのは、「それぞれの建築家の行っていることを虚心に見せていただき、そしてその結果、心が最も強く動かされたものを選ぶことにいたしました。」と述べられた後、「付け加えるなら、その建築の中に、長く居たい。もっと長く居たい。とおもわせるものを選定しました」「それはルイスカーンの語った言葉でもあります。」と語られた事が、心に強く響いた。そうそう、竹原義二さんと香山壽夫さんと矢田朝士さんによるトークイベントもとっても良い鼎談で、その後の懇親会にも誘われて同行し、一緒にお話をする機会もあって、実に楽しい時間だった。それにしても、ランニングの時と同じように、この時の、脳内に去来した言葉や感情を記録したかったねぇ・・・。

週初め、以前のブログのタイトル、「雑誌掲載」にも書いた、丹沢の山小屋、堀山の家の主人が、リースを届けがてら、遊びにやって来た。ジャズを聴きながら、四方山話を深夜遅くまでする。年上だが、ジャズの話が出来る唯一の友人で、その日は、なぜか、ローランドカークを聴きながら、彼の独特のドロっとしたサウンドの中にある、カークの持つ可愛らしさのようなもの、をお互いに共感しあいながら語りあった。コルトレーンのクレッセントを聴きながら、エルビンジョーンズのシンバルの微妙なタッチと抑揚の話とか・・・。そうそう、やっぱり、この時に、去来した、感情の記録と再生が出来ないものかねぇ・・。
DSC04814

木曜日、関西大学の学生が、大工を目指しているという事で、弊社に見学に来る。たまたま、この数日間、大工が、構造材の手加工をしていて、いわゆる、グットタイミングだった。これも、何かの「縁」っていうやつかねぇ・・・・。午前10時から午後5時頃まで、「まちのえんがわ」で本を読んだりしながら、加工場にて、ササキ大工とベッショ大工が作業する墨付けや刻みを静かにじっと見守り続けていた。休憩時間には職人さん達に混じって、一緒に休憩をしていたようだ。

DSC04568DSC04564

今という時代は、大工になるためには、厳しい時代なのかもしれない。親方にとっては、若い大工を育てるための金銭的余裕に乏しい時代なので、職人として、いわゆる、何とか使いものになる状態までの3年間ほどの費用を賄える余裕がないのだろうし、会社組織としても、同じ状態なのだといえる。まぁ、しかし、考えようによっては、大学院や専門学校に行くかわりに、大工のもとで、まずは、2年間ほど、無給で、修行してみるという過程を想定すると、学費を払う事を考慮すれば、ひょっとすれば、学校よりも有意義なのかもしれない・・。ただ、そんなふうに、きっちりと教える事が出来る大工がいるのかどうか。学生を教えるのに相応しい仕事があるのかどうか。また、そんなふうに考える学生がいて、そういう事は、社会的に、コンセンサスの得られる形態なのかどうか・・・。と、やっぱり、脳内で、思考や感情が、くるりと円弧を描きながら、何度か回転していた。

DSC04702


造園家の家谷さんからお誘いがあって、arte空間研究所の生山さんとコラボレーションした動物病院を見学。「植栽塔」という、みたこともない、建築的な「植木鉢」を初体験。いつものあの家谷さんって、実は凄いやん。と言いながら、一緒に珈琲飲んだ・・・・・。

というウォールを金曜日のフェースブックに載せた。家谷さんはコトバノイエの外構や造園を手かげているのだけれど、木村家本舗やその他、様々なイベントでご一緒なって、何時も、一緒に、あれやこれやなんだかんだと楽しく会話する仲で、それにしては、実際の仕事を見るのは、2回目。それが、普段の物静かな姿からは想像も出来ないほど、アバンギャルドな造園に、かなり度肝を抜かれた。植栽をするためだけの塔屋を大きな植木鉢として、建築家に提案したそうで、勿論それは、動物病院の広告塔になっているのだけれど、かなり、斬新で、刺激的。それに、「今でなく、10年後に植物が育ち、塔屋を、草が覆っていく、経年変化による良さを・・・」というコトバが、印象的言葉として残る。きっと、この建物を見学した時間の、その空間の立ち位置での、「私」の感情がうごめいた記録を、このブログ上で、再生出来るのであれば、面白いだろうなぁ・・・・。

その日、午後10時頃になっても、加工場で、大工が、なにやら、ゴソゴソと作業をしている音があって、何だろうかと見に行くと、「鉋削り対決 ベッショ大工VSササキ大工」という、どちらが綺麗に柱を削れるのかという鉋削り対決をしていた。どちらも真顔で目は真剣。ベッショ大工が鉋で削って、美しく光った柱を触ったササキ大工が、もう一方の面を美しく光らすために、負けじと挑戦する構図。そんな事を楽しめる大工って、羨ましいな・・・と眺めた。

DSC04746DSC04724
DSC04744DSC04742

「心が最も強く動かされたもの」「もっと長く居たいと思わせるもの」というコトバを聴くと、ランニングの距離と時間と場所を記録する機械のように、その場所と時間ごとの感情の喜怒哀楽など、心境を記録できる時空間感情記録装置があって、心のうごめきを記録し、再生し、眺めてみたいものだなぁ・・・。

投稿者 木村貴一 : 2011年12月11日 23:59 « 男宴昼宴女宴 | メイン | Making of 住宅風呂巡礼 »


Share (facebook)