2014年04月27日

春うらら。

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早朝、自転車に乗って、柏原の葡萄坂を登り、奈良県側の坂を下って、奈良盆地を眺めると、春うらら。霞立つ奈良の山々。葡萄畑のビニールハウスにキラキラ反射する朝日。今日は、一年のうちで、春と秋に数回だけある、とっても気持ちの良い気候の日曜日のひとつだったなぁ・・・・。そうそう、IMG_5623昨日の土曜日に、会社の外階段に「蜂」が大量発生し、空中を飛び交う蜂が、数十分後には、階段下に集結して、ひと塊となって、蜂の押しくらまんじゅう状態のような球体のまま、今日の日曜日になり、お昼過ぎに気がつくと塊ごとどこかに移動していた。ググると、春と秋にある蜜蜂の巣別れという行動で、女王蜂の世代交代にあわせて新たな巣をつくる場所を求めての引っ越しの最中らしい。マンガのように、蜂が帯状の隊列を組んで飛び立つ姿を見たかったが、人知れず静かに旅立ったようだ。そういえば、階段周辺には、一緒に旅立てず取り残された蜂が数匹旋回していて、みなしごハッチっていうのは、こんな感じの事なのかと、八の字に旋回するハッチを眺めながら思う・・・。

本日は住宅相談会の日で、珍しくまったく申し込みがなかった日曜日で、それは、4月から消費税があがった影響なのか。現場では、駆け込み需要の余波がまだまだ続いていて、初夏まで続きそうな様相で、それにしても、その後の日本経済が、今日のこの春の陽気のように、うららかであればと願うだが・・・・。弊社の設計と施工の打ち合わせはなかったが、それでも、岡文右衛門さん設計による「石場建て伝統工法」住宅の打ち合わせが、うちの家であって、それが、施主の方が、うちの家のキッチンと空間を参考にし、真似たいという、ちょっと嬉しいようなご要望で、その打ち合わせが、今日のこの日曜日になった。幸い、ほんとうにうららかな天気で、30年前のリフォームで新設した木製窓を全開にし、心地良い時間が流れる打ち合わせとなった。



この写真は設計のオカブンさんが撮影した写真で、ちょっと無断で使用し、この場を借りて、事後報告とさせて頂くのだけれど、「私」が26歳の時に、結婚する事になり、新居として、曾婆さんが住んでいた家をリフォームする事となった。設計と現場監督を自らし、2階をLDKにするプランに決めて、南に面した開口部を吉村順三さん設計による軽井沢の脇田山荘を真似る事にした。本からデティールを抜き出し、当時、第一線で働いていたミヤザキ棟梁に見せると、「よっしゃ、わかった、やったるわ!」と言って、造ってくれた。今からおもうと、全く建築の奥深さもシゴトの大変さも理解していなかった若造の情熱だけを親切に汲み取ってくれたミヤザキ大工のお陰だと、「いま」にして、30年近くかかって、ようやく、その有り難さが解るようになった。

↓ 脇田山荘のグーグル画像検索。
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昨年のお盆休みに軽井沢旅行をし、そこでサイクリングがてら、初めて、その脇田山荘の実物を塀越しに眺めたのだけれど、今日、設計のオカブンさんと話していて、その30年前の当時の事を思い出した。新建築という雑誌を、まるでレコードを何度も聴くような感覚で、繰り返し繰り返し何度も何度も細部まで楽しみながら眺めていた。まったく、シゴトなんていう感覚はなく、おそらく、高校生の時に創刊された「ポパイ」という雑誌の影響を受けていたのだとおもう、「カタログ」の見方と読み方と眺め方を雑誌を見るという楽しみと遊びから学んだのだ。そんな感覚で建築雑誌も眺めていた。フェイバリットな建築を見つけると、好きなアーチストのアルバムを何度も何度も繰り返し聴くように、ただただ、何度も写真を眺めた。情報やその精神を雑誌から得る時代だったのだろう、「インターネット」なんていう情報ツールがない時代は「雑誌」や「レコード」が面白かった時代だったのかもしれない・・・。

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ちなみに、全開木製建具は30年間そのままの姿で愛用していて、ただ、リビングだったこの部屋は、15年前のリフォーム工事で、リビングキッチンに改造し、1800mm×1800mmのなかに600mmの奥行きのキッチンを入れて、残りの1200mmの奥行きでチークのテーブルを造った。そのテーブルで3時間近く、設計の打ち合わせをしたわけで、そういえば、息子もこのテーブルで勉強をしていて、もちろん朝食や昼食は、ほとんどこのテー-ブルで済ましている。こんな空間の違うバージョンを造ってみようかな。という打ち合わせで、きっと、あの軽井沢の空気感を部屋うちに取り込むような設えとしての吉村順三設計による全開できる木製建具が、大阪の小路の下町のこの部屋に、春うららの陽気を招き込んで、打ち合わせの助けをしてくれたに違いない。振り返ってみれば、この全開できる木製窓が、内と外の間に入って、家族間のさまざまなドラマや葛藤を「呼吸」し、心の新陳代謝も促進させてくれていたのだな・・・・。

投稿者 木村貴一 : 2014年04月27日 23:59 « 生きる姿勢 | メイン | まちのえんがわステンドグラスが結ぶ縁 »


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