2016年01月16日

嬉しかったコト。

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ダック電子堂という小さなスピーカーメーカーが東大阪の西堤にあって、30年前の結婚を機にリフォームをした時に、そこのスピーカーを買った。勿論、JBLに憧れていて、JBL4312から4344へという王道なども思い描いたりしていたし、ミナミのバンビにあった、パラゴンオリンパスのデザインにも憧れていたので、安藤忠雄さんの六甲の集合住宅の最上階にあるアールの擁壁を見たときには真っ先にパラゴンのデザインを思い浮かべたりしたものだった。それにアルテックA7など置けるスペースも鳴らす自信もなく、タンノイのクラシカルなデザインもエエが、JAZZやロックからすればちょっと違うし、そうそう価格の問題が大きくあって、ダックのマリーサCの20万円台でこの音ならまぁ充分楽しめそうで、なによりも工務店という立ち位置を考慮すると、超有名ハウスメーカー的なJBLを楽しむより、手作り感満載の工務店的小さなスピーカーメーカーに共感するのも良さそうに思えた。

ところが、リフォームの設計段階でスピーカーの位置を考慮する事もなく、ろくにスピーカーのセッティングもせず、アンプもCDもレコードプレーヤも持ち合わせのものを使っていたので、そこそこに音が鳴る程度で、これが良かったのか悪かったのか中途半端な音で何となく楽しんでいる状態が続いた。それから15年後に再びリフォームをする機会が巡ってきて、今度こそは、スピーカーの設置する位置と、その音響も考慮して、床の無垢の栂フローリングとその下の断熱材。壁の板張りと珪藻土の組み合わせ、天井の布張りと断熱材など、住宅としての機能やデザイン性だけでなく、音響としての役割も担ってもらおうと意図して、素材感による居心地の良さと音響の心地良さの共存を図ろうと試みた。

それで、今度こそは新しくJBLを購入しようかと思ったが、まず手持ちのこのスピーカーをきっちりと鳴るようにするのが、コストパワーマンスを考慮しても良さそうで、リフォーム的な感覚としても、ダック電子堂の真空管アンプを買って組み合わせることにした。そうすると部屋の音響とも相まって、劇的に音が良くなって、今まで聴こえていなかった音が聴けるようになり、ビルエバンスのワルツフォーデビーでは、こんな音が入っていたんや...などと、「音楽」だけでなく「音」も楽しめるようになった。それで、スピーカーを縦に置いたり横向きに置いたり、中央に置いたり、壁際に置いたり、いろいろ試しているうちに、横向きにスピーカーを置いて、台座を無垢の梁材にして、スピーカとの間に新聞紙を敷いて、少しだけ上向きにし、中央に寄せるより壁際の方が良かたりと、スピーカー設置の基本とは全く違うセッティングになったが、自分にとって心地よく聴こえる位置を見いだしたりするのが、楽しい作業と遊びで、ま、そんなのが、リフォーム的感覚なんだろう。

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ところが、部屋が反響を押さえた設計だったので、高音が響かず、それにもともとマリーサCはそういう中音域が豊かなスピーカーで高音が出にくいスピーカーだったのだろう、ドラムのトニーウィリアムスやエルビンジョーンズのシンバルでどこの位置をどれぐらいの力で叩いているかを聴きたいわけで、ブラシがドラムをどんな感じで回転しているのか、その様子も想像できて欲しいしのに、そんなのがいまいちで、マイルスのインザスカイから始まったインアサイレントウエイ以降の電子楽器が多用されるCDになると高音は全然ダメで、それにベースがロンカーターからデイブホランドに変わったそのエレクトリックベースの良さもエエ音として響かなかった。

ある日、奥方が、ケーブルテレビのJcomを導入するといい出して、きっと韓流ドラマを見たかったのが本心なんだろうが、そういや最近判明したことだけれど、韓流ドラマ専用チャンネルにお金を払っているらしい(笑)。ところが、その機器がパナソニック製のDVD付きで、それと真空管アンプをつなげて、何気なくCDを挿入すると、テレビのスピーカーと真空管を通したマリーサCのスピーカーの両方から音がなって、中音域をダックのスピーカーが担い、高音域をソニーの液晶テレビのスピーカーが補ってくれて、劇的に「音」がカイゼンされて、シンバルもベースも響くようになり、ロックも鳴るようになった。勿論、上には上があり、輪郭のはっきりしない高音と低音なのだけれど、それでも充分に楽しんで聴ける「音」になった。こういうのが、いわゆる「邪道」という部類に属する手法なのだろうが、それでも建築なら堂々とその良さを語るかもしれないが、音響に関しては、中途半端なマニアなので、こんな場で語るすべもなく、一緒に聴くひとにそれとなく語る程度だった。CDを聴くためには、いちいちテレビを付けて、真空管アンプを付けてと、ちょっと面倒くさいダブルスタンダードなのだけれど、「音」の良さには抗しがたく、それにしても奥方と韓流ドラマとケーブルテレビがこんな「発見」を促してくれた....。

さて、長男夫婦との同居がはじまって、もう少しだけ離れてお互いのリビングダイニングスペースをそれぞれ確保しながら暮らせるようなリフォームを計画中で、やっぱり、夫婦二人のリビングダイニングの「音」をどうするかを検討する切迫感のようなものが押し寄せてきて、それで、昼から、久しぶりに東大阪のダック電子堂まで自転車で出かけて相談することにした。30年前にスピーカーを買ったときは親父さんから買って、代が変わって、15年前にその息子さんから真空管アンプを買い、その時以来で、こんなのが、個人商店の設計施工のスピーカー屋さんの良さなのだろが、2時間以上も一緒に「音楽」と「音」を聴きながらあれこれと話がはずんだ。

何よりも、マリーサCの高音をカイゼンしたノラボンバーという製品を発売したのが昨年の5月のコトらしく、やっぱり高音を何とかしたいと試行錯誤していたのを知って、その音が、テレビと真空管アンプとスピーカーで鳴らす「邪道的」な音を、「王道」的な技術とユニットで音質を向上した製品になっていたのが嬉しかったコトで、いま手持ちのマリーサCの箱をそのまま使って中身を新しいユニットに入れ替える「リメーク」をしてくれるらしく、それはいわば、今の建物の外観はそのままにリフォームして、耐震性能と気密断熱性能を向上させて、快適さを向上させるリフォームに等しい発想だった。

もともとスピーカーごと、リビングを長男に譲るつもりだったので、今回の母屋のリフォーム予定のリビングはスピーカー中心のセッティングをする間取りにはならず、それで、液晶テレビの下にブックシェルフ型のレリダという最近出来た小さなスピーカと真空管アンプを設置しようと考えていて、その試聴のために訪れるのが目的だった。ところが、偶然にも、うちと同じようにテレビの音とそのレリダを一緒に鳴らすセッティングになっていて、今までやってきた音のセッティングが、そんな間違ったコトでなかったんだと解ったのが、とっても「嬉しかったコト」だった・・・・。

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そうそう、土曜日は恒例の「お餅つき」をして、今年は長男の奥さんの実家の東北福島から餅米を取り寄せて、それがとっても良いお米で、漫画のようにお餅が伸びる餅で、とっても美味しかったが、なによりも、沢山のOB施主の方々や、「まちのえんがわ」を通じたお客さんにお越し頂いて、そんなのがとっても「嬉しかったコト」でした。感謝です。

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投稿者 木村貴一 : 2016年01月16日 23:59 « tradition | メイン | 潤い »


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