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住宅建築 2001年2月号

自然素材

つくりけることはできるのか

山畑の家

設計=三澤康彦・Ms建築設計事務所
施工=木村工務店
ところどころ田畑が点在する信景山のやまふ
ところ,周囲に3 階建が建つ30坪の土地が今
回の敷地である. ここにもともとあった家
は太陽が射しにくく午前中から電灯を点けて
いたという. 13年住んだ後の建替えの決断
となった.
南北には建物が近接し, 道路から見ると若干
混み合っている印象を受けた. ところが敷
地裏側は緑あふれる植木屋の畑であり,思い
のほか目線が抜けていた. 敷地内には最低
一台分の駐車スペースをとること, 家族四人
に必要な器の大きさから建物を三層とするこ
とにした.
玄関格子戸を開けると細い通り土間が奥の坪
ひんやりとした少し暗めの1 階. 階段をの
ぼり居間に入った時,その明るさが対照的だ.
隣家のふんだんな緑に面した位置にあるこの
居間は,上部を吹抜けとした. そして周囲
からの視線のほとんどない恵まれた東の壁面
には2 , 3 階にわたり大きなガラス面をつく
った. 朝を告げる東の光がここから射しこ
み, 陽がおちるまで一日の移ろいを感じる.
また, 中秋の名月のころには, ここから眺め
る景色が何よりのごちそうだという.
通りからは想像もつかない線あふれるこの場
所を核に家族の新たな生活が営まれていくの
だろう. (三澤康彦・和田純)