2012年04月08日

家を楽しむ。

4月1日日曜日。
この日、第五回住宅風呂巡礼を目神山でする。第四回は、お風呂に入る温泉ソムリエぐっちと、建築家のギターリストという、とんでもない設定で、「いったいキムラさん、あれ、何ですかぁ!」 と、喜んでくれる人もあったのだが、顔をしかめる人もあって、住宅風呂巡礼というのは、本来的には、各地の温泉を巡り、気持ちよさそうに温泉に浸かる温泉ソムリエぐっち氏が、様々な住宅のお風呂に入って、気持ちよさそうに浸かるシーンを通じて、「家を楽しむ」というスタイルを見つめ直してみようよ。という真面目に住宅のお風呂を巡礼する旅であって、ここは、もう一度、その原点に戻って、普通に楽しくお風呂に入るシーンを撮影するコトになった。
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4月2日月曜日。
午前10時すぎ、社内で設計担当の3名と定例のミーティングをしていると、突然、顧問で、見積を手伝ってくれている、75歳になるフクモトさんが、てんかんを起こして、倒れる。それIMG_3017で、救急車に同乗して八尾の徳修会病院に行った。幸い、無事で、お医者さんも淡々としていたのだけれど、そのフクモトさんは、「私」がまだ、幼稚園に通う前の頃に、その私を仕事中の車に乗せて、寝かしつけたのだという。急ブレーキをかけたら、前にゴロンと倒れよったわ。なんて事を時々若い社員にも話す。その「私」が、フクモトさんの付き添いで2回も救急車に同乗することになった。ちなみに、病院からの帰りにタクシーに乗り、小路まで。と伝えると、お客さん、ひょっとして、昨年の暮れにも乗りませんでしたか?と聞かれた。偶然にも同じ運転手さんだった。「巡り巡る縁」の不可思議。

4月3日火曜日。
IMG_3020加工場では、大工が構造材の刻み加工をしていて、ここ最近は、加工場をワークショップのためのスペースとして利用しているのだけれど、元来は、木材を加工するための加工場であって、その、「ものづくりの空気感」があってこそのワークショップ会場。久しぶりにその本来的な用途としての利用だった。ところで、大工が鉋の刃を研ぐ姿はカッコエエとおもうし憧れもする。その大工が研ぎものをする時に、その台に対峙して、先日のワークショップで、谷口智則さんのライブペインティングで描かれた絵があって、その絵の、ほのぼの感と、大工の研ぎの緊張感とが、絶妙のバランスなのか・・・・・。

4月4日水曜日。
午前中に現場監督になりたいという、現在は住宅の営業をしている男性が面接にやってきた。職業として、何をしたいのか。何になりたいのか。何がむいているのか。なんていうのは、本当にムツカシイコトだとおもう。職業っていうのは、一種の賭のようなものかもしれないが、「続けること。好きこそものの上手なれ。」が、自分に合った職業としての確率を高くしていくのかもしれない。しかし、そんなコトバが、いまの時代に通用するコトバになりえるのかどうか。そうそう、昼からは、お施主さんとの設計打ち合わせが3件連続で続いて、もちろん、それぞれに設計担当者がいるのだけれど、流石に3本目が終わると少々疲れて、いや、そんなコトより、きっと「私」は打ち合わせが好きなのだ。と、振り返って見ればそう思えてくるのは、単に、そんなコトをもうかれこれ30年近くも続けているからだけなのだろう・・・・。

4月5日木曜日。
タカヤマ建築事務所のタカヤマさん設計による堺の長屋のリフォーム工事で、着工のお祓いをお施主さんと設計者と施工者で執り行う。その様子は、現場ブログに書かれてあるのだけれど、それはそれとして、以前の長屋の住人が、随所に、デザインを施してあって、それがなんとも楽しげで、それを発見する度に、ウキウキした気分になる。そのデザインが、イマという時代に通用するデザインとはいえないかもしれないけれど、「家を楽しむ」という、その雰囲気がとっても嬉しい。デザインって何かねぇ・・・と考えてみた。

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4月6日金曜日。
午前中、打ち合わせで、京都の長屋にお伺いする。住まい手が、長年パリで住んでいたこともあって、その「家を楽しむ」センスに魅了される。建具も古建具屋さんで、本当に上質な建具を購入して入れ替えているので、なおいっそう、空間が引き締まって見えた。前日に見た堺の長屋のデザインセンスが南蛮的なら、この京都の長屋のデザインセンスは、数寄屋的なのか。
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夕方から、木村家の自宅で、枝垂れ桜の花見があって、7分咲き程度だったが、それでも、花見はやっぱり楽しい。もともとこの枝垂れ桜は、私たち夫婦が結婚した年に、奥方の実家がある堺の金剛の園芸店で購入した、ほんとうに小さな桜の木だった。それが、庭の片隅にひっそりと植えてあったのだけれど、10年前に、海平造園のウミヒラさんが、庭の主役として、枝振りを整えて、「家を楽しむ」桜として、育ててくれた。お陰でここ5年ほど、社員と大工さんと手伝いさんら30人ほどで、花見をする。そうそう、うちの若手も、最近は花見の段取りを覚え、手伝い、片付けてくれるようになって、こんな宴を通じて、あれやこれやと学ぶ事が、日本の文化なのかもしれない・・・・。

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4月7日土曜日。
暮らし向上リフォーム研究会なのでご一緒している、女性設計士の澤木さんの自邸のオープンハウスが神戸の住吉山手であって、お伺いする。雑木林に囲まれた立地の素晴らしいこと!暖炉だけで家中が暖かくて・・・。「家を楽しむ」っていうのが、とってもエエ感じだった。そういえば、下には住吉川が流れていて、10年ほど前に、ひとりで、この住吉川の上流にある西山谷を渓流シューズを履いて、沢を登り、六甲山に上がったその日のコトを久しぶりに思い出した。

4月8日日曜日
朝から地鎮祭があって、うららかで、雲ひとつない天気で、あっ、ようやく、ほんとうに、春がやってきたのだ。という穏やかなムードが参列者の中に漂った地鎮祭だった。
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昼から設計の石井良平さん主催によるお花見が目神山であって、ほとんどが設計の立場の人たち。それが、生憎、桜は蕾のままで、生まれて初めての、花の咲かないお花見となった。流石に、浮かれた気分までには昇華しきれなかったかもしれないが、それはそれで、印象深いお花見だった。そういえば、夕方の花見を終える頃には、開花しだした桜もちらほら。
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そうそう、今年の目神山でのお花見のハプニングは、イシイリョウヘイさん案内による、目神山12番坂にある石井修建築の解説だった。その12番坂にある様々な建築を皆で巡っていると、「日本の家」というものを、どのように造っていけば良いのだろうかと考えさせられた・・・・・。

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その後は、故石井修さん設計の自邸である回帰草庵で寛ぐ。かつて、石井修さんが健在だった時に、このコルビジェの椅子に寝転がって北向きの庭を眺めて寛いでいたのだと聞かされた、その椅子に座り、笑顔で、家のコーナーを楽しむ設計のヤベさん。この名作の居間で、堂々とギターを弾き語る、設計のオオタさんとそれに併せて熱唱するヤベさん。故石井修さんの奥さんから拍手が起こったのがせめてもの救いだなぁ・・・。造園のイエタニさんは、不法侵入者のごとく、外を歩き回って、外から家を眺める。それぞれが、回帰草庵の広いリビングダイニングで、それぞれの居場所を見つけて、家そのものを楽しんだ。そうそう、「家を楽しむ」コトへの回帰・・・・。

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投稿者 木村貴一 : 2012年04月08日 23:59 « 多肉男子 | メイン | パスポート »


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