2014年11月09日

木を組みたてるという「ものづくり」の共有体験がもたらす何か

小雨降る今日の日曜日は、建築家のヤベさん設計によるケンチク椅子ワークショップが「まちのえんがわ」であって、ヤベさん曰く「仕口がない・留めがない・仕上げがない」という三つのルールの元、誰もがある一定レベルで製作出来る木で組み立てる椅子の事をケンチク椅子と名付けて、一作年のワークショップで製作したBB1と名付けられた椅子を今年も製作するのだけれど、その座面に布地を張る作業を加える事にして、椅子張り職人の舟木さんと船越さんと女性の職人さんに協力してもらう事になった。

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24mmの合板でできたシンプルで簡素な椅子だが、それぞれの長さは24の倍数になっていて、それにビスの位置も24の倍数で、きっちりと決められた位置に丁寧にビスをとめる事だけは、大切な手作業として求められるのだけれど、そうして誰もが、ある一定のレベルで出来上がった木組の椅子が、布地を張ることで椅子に個性が発生するのが、とっても面白い体験で、椅子の張り布を見て、あの椅子はどんな人なのかと想像したくなる・・・、ま、それよりも、若いカップルや、そこそこの年齢のご夫妻や、子供さん連れのご家族が、この椅子を造るために時間と空間を共にし、助け合いながら、ものづくりの「共有体験」を持てる事で、お互いのコミュニケーションの助けになるのが、もっとも嬉しい出来事なのかもしれない。言葉だけによるコミュニケーションは、さまざまな間違いを生むしね。

そうそう、この土曜日は、建築家の石川さん設計で、ご主人がアメリカ国籍で、日本人の奥さんと男の子二人のお子さんがいらっしゃるご家族の上棟式が西宮であって、勿論、日本式に御幣を建て、二礼二拍手一礼でお参りし、御神酒とお塩とお米を四方に蒔いてお清めをした後、祝宴を催したのだけれど、お施主さんが、ビンゴゲームを用意してくれたりし、腕相撲大会を開催したりと、それは西洋的なエンターテイメントの要素が入った、とっても愉快な上棟式となった。

上棟の宴席で、「住宅展示場にあるような魂のない家には住みたくないので、建築家を探し、それで石川さんと出会って・・・」「魂のある家に住みたい」という、アメリカ人のお施主さんから発せられた言葉が、何よりも印象的で、考えさせられたコトバだったのだけれど、着工前にも関わらず、トリの巣箱ワークショップに、ご家族で参加して頂いて、木を組み立てるものづくりの共有体験を一緒に持つ事が出来て、そのうえ、ほんまもんの「木組み」という、日本的なものづくりの空間で、神道的な祈りとお清めと感謝という儀式を共有し、日本的な粛々とした宴に、アメリカ的エンターテイメントと、西洋的な何度も乾杯を繰り返す宴が合体し、それは東洋と西洋が融合したような上棟式となって、そんな時間と空間を共有する事によって、国籍や民族や年齢や職業を超えたコミュニケーションと理解がうまれたのが、とっても嬉しい出来事だった。

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沖棟梁が、「日本的なる木組というものを通じてやね、世界のひとと共に、愛と平和ちゅうのがもたらされて、それを分かち合うちゅうのが、私の望みでもあり・・・・」と、それなりの日本酒の量を飲んでいるものの、賑やかな宴席のなかで、静かな音声で、私の右耳の近くで呟いたコトバは、80歳をすぎてもなお現役で上棟式に参加しようとする大工職人だけが語れる「言魂」なのかもしれない・・・。

投稿者 木村貴一 : 2014年11月09日 23:59 « フクシマ | メイン | イン・ザ・スカイ »


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