「見積」と「施工図」

木村工務店が所在する生野区小路地区で、上棟式があった今週。
30年ほど前は、会社の近くで新築やリフォーム工事をすることが多かったが、ハウスメーカーの台頭により、地域性というその概念が大きく変化し、かつては会社から徒歩圏や車で20分ほどが、圏内のような感覚で、地域の工務店が仕事を受注していたものだが、大手ハウスメーカーが、ショールームを持ち、どんな家を建て、そこにどうやって住まうことができるか、とっても明快で、そのうえ大きな会社組織としての信頼感の圧倒的強さに、私たちのような小さな工務店には、太刀打ちできない状況が続いてきたとおもう。
木村工務店の家づくりに共感を持って頂ける方がいらっしゃれば、車で1時間の圏内であれば、どこにでも建築工事に行きますよ。というスタイルになって30年ほどが経過しているようにおもう。ごく近場で、家を施工することに拘らなくなった、その30年間のなかで、IT革命というデジタル技術の進行によって、小さな組織内の情報共有のレベルが格段に上がってきたし、BIMというデジタル設計の技術が進化し、三次元で空間を共有することが容易になって、ショールームがなくても、どんな家でどんなライフスタイルになるのか、お客さまと共有しやすくなった。

既製品化や標準化も重要な要素だが、ものづくり的な部分を携えた工務店として存続したいとおもうと、ものづくりのチームとしての協力会社との良い関係性を維持していくことが、とっても大切な要素であるとともに、その建築物のものづくり的部分を施工できるようにするための「施工図」と数的にお金的に置き換える「見積」という要素がとっても大切だとおもうが、工務店業界の情報誌には「見積」の話などクローズアップされることが全くないし、建築学科の授業にも「見積」なんて、みたいな感じで、習うことも、教えることもない…..。
「施工図」と「見積」の技術は、工務店にとっては、心臓のように、もっとも大切な要素だと、木村工務店のなかで、脈々と伝わっている技術で、その技術を長年担い、社員にその技術の稚拙さを昭和的厳しさで鍛えてくれて引退した福本さんが、昨夜お亡くなりになったと知らせがあった。あらためて、これからも「施工図」と「見積」という技術を精進していきたいとおもう。
小路地区で、久しぶりに新築の機会に恵まれ、上棟式で、施主さんと職人さんたちと携わっている社員の皆さんと、木組みの下で一緒に飲んで、祝福できるのが、とっても嬉しいコトだった。と、施主への感謝の気持ちとともに単純に書こうとおもったのに…..おもわぬ方向に。「情報の共有化」や「BIM」や「ものづくりの仲間たち」や「施工図」や「見積」の進化を精進して、また、この小路地区でお仕事できれば、嬉しい。