「霊を迎えて供養する」お盆

「お盆」になると、それはほとんど「夏休み」と同義語で、若い頃はどこに遊びに行こうかと楽しみでしかたなかった。子供の頃は、どこかに連れていってもらえるのが楽しみだったし、大学生の頃になると、「旅」なんていう感覚が理解できるようになって、お盆に実家にいる機会がなかった。祖父母と両親が亡くなってようやく「お盆」の「先祖の霊を迎えて供養する」感覚に、現実感を伴えるようになった。

結婚し、長男が生まれ、いくつになった時か記憶が曖昧だが、お盆休暇に北海道を旅することになって、ひとまわり歳上のセツを中心とした東京在住の友人たちと、屈斜路湖コタン温泉露天風呂の芝生広場で、待ち合わせをし、 ベースキャンプを張って、ゆったり過ごしながら、車であちらこちら観光しようということになった。

その旅の計画の時に、武田泰淳の「森と湖の祭り」を読んでから屈斜路湖畔に集合しようとセツからの提案があって読んだ。共有する心のようなものが芽生え、旅に多次元的な楽しみと面白さを創造できるコトを知ったし、その後、武田泰淳の著作もいろいろ読んで、その旅の余韻と影響が持続的に続くコトになった。

そのセツが、丹沢の小屋番をしている堀山の家で亡くなって10年以上がたち、今日は、長男からの提案で、その小屋に、magosを伴った長男家族と次男も交えた6人で登山して、小屋に泊まり、お盆的な供養もしようということになった。このブログをアップした8月10日日曜日は、そこに泊まっているはずだ…..。というわけで、前日の土曜日に書いて予約投稿した。ちなみに長男と次男が高校生になるまでは、毎年連れだってその山小屋に泊まりに行ったものだ。

先日の欧州建築視察旅行で一緒だった秋山東一さんは、17歳ほど歳上の師匠でもあるが、その秋山さんが、若い時に衝撃を受けた建築を皆と一緒に共有したいということで、このブログの「機転が利く」という題で書いた、イングランドのレスターという都市にあるジェームズスターリングのレスター工科大学工学部棟に訪問した。

それはそれとして、その旅行から帰って1週間ほどした日に、秋山さんから「これ面白いです」というだけのメッセージが来て、そのリンク先を開けると「ロスト・キング500年越しの運命」というアマゾンプライムのビデオだった。レスターで建築を見学した時に、バスガイドさんが、この近くの教会でリチャード3世の墓が2012年に発見された。というアナウンスがあって、何気に興味を抱いたので旅行から帰ってウィキペディアなどで調べた。秋山さんも同じだったようで、このメッセージが送られて来た。

すぐに視聴した。とっても良い映画だった。500年越しにリチャード3世の墓を発見するその物語の主人公はスコットランド出身の専門家でもない女性で、その映像には、エジンバラのフォース橋も背景に映し出されていたので、旅の想い出とも重なったし、秋山さんがフェースブックに投稿された「リチャード3世の墓発掘のドキュメンタリー映画版」も視聴して、この旅の多元的な楽しみが持続することになった。なによりリチャード3世の物語を一緒に共有している喜びのようなもが楽しかった。

その秋山東一さんが亡くなった。と8月7日朝のフェースブックの投稿で知った。突然の出来事だった。

ロンドンにて。秋山東一さんのお誘いで、コスモホームの鈴木さんと、ロンドン在住のフォントデザイナーの河野英一さんと、4人でロンド・ントランスポート・ミュージアムを見学した。それが良き想い出として残るのだが。その後に、ケンジントンのMarks & Spencer で開かれていた日本展を見学し、ラーメンを食べながら、河野さんが、今度の万博の「リング」は視てみたい….という話題になった。河野さんの帰国とともに秋山さんと3人で万博いきましょう!と誘ったが、秋山さんは、この万博に行くコトに乗り気そうでは全くなかった。それはとっても理解できるコトなのだが、それでも1日だけ「阿呆」になってください!万博をある種のお祭りだとおもえれば踊る阿呆に見る阿呆的に1日だけ3人で楽しめる可能性ありますから、うちの家に二人で宿泊してください…..と皆でラーメンの汁をすすった。 

この物語の結末は、3人での万博リング見学は実現しなかった。で終わる。
秋山東一さんという存在に感謝すると共にご冥福をお祈りします。

木村工務店のお盆休暇は8月10日から8月17日の一週間頂戴します。 
皆さん良きお盆休暇を!