「美」と「美の拡張」

京都へ。タクシーに乗ると、運転手さんが「先週までは紅葉まっ盛りで、人がいっぱいでしたけど、今日は、すいてますわっ。中国人観光客が少なくなったから、公衆便所が綺麗ですねん」と。赤いカーペットのようなモミジの落ち葉越しに本堂の外観を「真っ直ぐ」眺める。

そのお寺の回廊から太い柱と梁と垂木と手摺に囲まれた木組みのフレーム越しに赤い落ち葉のカーペットを「見下ろす」。そうそう左端に写っていた「人」を「クリーアップ」で簡単に消せた。写真の美には人の存在が邪魔だったり邪魔でなかったり…..。

ますます、斗栱(ときょう)と垂木の美しさを楽しめるようになってきた。ここに椅子置いて、珈琲かビール飲みながら、紅葉を友にして、木組みを見上げているだけで、何時間か楽しめそうだ。木組みの構造が、装飾のように見える美しさ。木造建築の美のひとつに、屋根裏と天井の美しさがあるとおもう。当時の大工が、庇を長く伸ばすために、どのように考えて、こういう木組みの構造に至ったのか、紐解いてみる面白さがある。「見上げる」という所作が、楽しい。

チームラボ バイオヴォルテックス 京都へ。「見上げたら」京都のお寺の木組みと紅葉に囲まれた美の空間とは、全く違う、「美の拡張」を体験する。写真を撮る「私」にも遭遇できた。「人」の関与が必要な美だなっ。「見るもの」から
「共に生まれるもの」へというコトらしい。

↑ 「見下げたら」こんな紅葉のように見える空間があって。↓ 「真っ直ぐ見る」とこんな空間もあった。来年の紅葉の時期には、チームラボ バイオヴォルテックス 京都で体験してから、お寺の紅葉空間を体験してみようかとおもう。

そうそう、建築家竹原義二さんの講演会が関西大学であった水曜日。竹原さんの木構造を担当する下山さんからのお誘いで行くと、木造設計製図の受講生の3回生と4回生が沢山参加していた。木組みの話、リノベーションの話、子供園の建築と子供の話、などなど、とってもエエ講義で、こういう話を学生時代に聞けたら、建築「好き」になれるのかもしれない…..。それで、竹原さんのスライドのなかにこんな言葉が書かれてあった…..

原点に還る 目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませ 、一万年前に思いを馳せてみる。脈々と受け継がれてきた文化の中に、たくさんの知恵が隠されている。その知恵をすこしずつ、紐解いていくことで、現代社会を見直す足がかりが、見つかるかもしれない。 

京都で、木組みの美とチームラボの美の拡張を体験した後なので、とってもタイムリーなコトバだった。講義のあとは、竹原さんと木下先生と木造設計製図の授業を一緒に担当している米谷さんと下山さんとの5人で、イタリアンを食べてワインを飲みながら、あれやこれや。刺激的な夜だった。