「伝統と現代、継承と革新のせめぎ合い」

日曜日の早朝。自転車で金剛ロープウェイまで往復することにして、途中、石川の玉手橋で自転車を止めて撮影。映画「国宝」の映像シーンの記憶が残っているのだな。この反対が校舎の見える向きで、ここをわざわざチョイスして、あの映画のワンシーンを作りあげるのかぁ…なんておもった。「風景の中の視覚的効果」という課題を学んだみたらっ!と私にわざわざ本の切り抜きを送って頂いたのが故秋山東一さんで、それ以降、「橋」の見方や「ランドスケープ」に新しい視点が加わったようにおもう。下の写真のイングランドのダラムにあるキングスゲートブリッジが、「風景の中の視覚的効果」の教材だった。その橋で、ひとり佇む秋山さんと撮影する私。秋山さんのピース姿は珍しい気がする…..。

あらためて玉手橋のデザインをみると、橋の入り口付近の両側のコンクリートの塊の頭頂部に、中世ヨーロッパ風というかフランクロイドライト風というか独特の「装飾」があり、吊り橋を吊る主塔の装飾デザインとして使われている。主塔のアーチのデザインもレトロモダン風で、赤い欄干も含めて、全体的に昭和レトロモダンといえるのかも。この橋が、玉手遊園地へのゲートの役目を果たす「非日常への入り口」としての「橋」であったことも考慮すると、映画国宝のテーマにある「伝統と現代、継承と革新のせめぎ合い」の導入部として、二人が学生時代を過ごすシーンを、この橋を使って撮影することで、映画としての「風景の中の視覚的効果と心理的効果」を生み出そうとしていたのか….なんて想像してみた。

ワイン会を催した金曜日の夜。戸田木材店の戸田さんとはMOKスクールで知り合いになり、会社に無垢のフローリングの営業に来てくれて、それがとってもマニアックな人だった。同じMOKスクールで知り合いになった八尾の高津木材の若林さんと一緒に食事する機会があって、あれやこれやと「木」のマニアックな話で盛りあがっていると、実はワイン通なのだという。じゃぁ、うちの家で、フレンチのシェフよんでワイン会しましょ!と、トントン拍子に話が進んで、8名の建築関係で「木好き」のひとが集まるワイン会になった。

フレンチの出張シェフの上地くんとは、かれこれ7、8回、家で食事会を開いている。30代後半でお店を持たず出張シェフと料理コンサルタントとして仕事をしている姿をここ4、5年見てきて、その食事のクオリティーがどんどん進化している姿を垣間見ると、あらゆるところで「伝統と現代、継承と革新のせめぎ合い」が起こっているようにおもう。このメインのジビエ鴨肉も、いままで食べた事のない焼き加減と食感とソースの組み合わせだった。

戸田さんは用意した11本のワインに自分で試飲した感覚を自分のコトバで書いたワイン紹介のパンフレットまで用意してあって、そのマニアックぶりが伝わるが、本職の木材に関してはホームページで、そのコダワリぶりをより感じさせられる。今回の食事会では、そうゆうオーラのもとでワインを飲みながらフレンチを食べながら話をするので、自ずと「木」に関する「伝統と現代、継承と革新のせめぎ合い」の話で盛りあがったようにおもう。

食事会の翌日の朝。うちのキッチンに並んだワインの空き瓶を見て、よー飲んで、よー話したなぁ…..とおもった。

「大屋根リング」という「単位」

どこでも大屋根リング」というのがあると知って、ミナミの御堂筋と周防町筋との交差点、アップルの店舗のあるあたりを中心に置いたら、南北は道頓堀川と長堀通りの間で、東西は四つ橋筋と玉屋町筋の間に挟まれた範囲だった。万博の感覚をミナミに当てはめたら案外狭いなぁ。というか丁度ウロチョロできる良い範囲だな。心斎橋筋商店街を中心にして、ヨーロッパ村と呼ばれていた周辺と、アメリカ村周辺と、道頓堀周辺をウロチョロしている感覚。ちなみにリングの大きさを調べたら…..

  • 全周:約2km
  • 建築面積:約6万平方メートル
  • 高さ:約12メートル(外側は20メートル)
  • 内径:約615メートル
  • :約30メート

ミナミがこんなリングで囲われてたら面白いけどねぇ。 まぁでも、ほとんどの建物がこのリングの高さより飛び出るので、ちょっとアカンかぁ…..。日本のどこかの町に設置したら、どうなるのだろう…..と想像力湧いてくる。こういうソフト作ったひと、なんか好きだな。

ちなみに木村工務店を中心にあてはめてみたら、ちょうど歩いてウロチョロしている「町」の感覚だと知る。この範囲を超えてきたら自転車でウロチョロだな。生野区の東端に木村工務店はあって、だいたいこの円形リングの右=東側に行くと東大阪市になる。なので布施に行くときはママチャリ使う。大屋根リングの半径超えたらチャリンコね。みたいに大屋根リングが「単位」になったらオモロイかも…..。

工務店では、今でも「寸」や「尺」を使う。1尺=0.303mと定められていて、1辺が6尺=1間の正方形を1坪と定めている。なので面積も「㎡」より「坪」の方が感覚的にフィットしやすいので、約10㎡といわれると、坪に換算して、9.9㎡≒3坪で、1坪=2畳なので、約6畳の大きさやねぇっ。と感覚の共有がしやすい。畳が感覚的共有をする単位になっているようにおもう。で、大屋根リング1週ぐらい歩くわっ!といわれたら2kmで、ちょっと距離あるなぁ。とか。半周ぐらいにしとこかぁ。みたいな感覚。直線的に歩いたら615mだそうだ。

そういえば、万博行って、帰る時に、パビリオンの間を抜けて帰るか、大屋根リングでぐるっと回りながら帰るか、選択する時があって、今日は早く帰りたいから直線選ぶけど。とか。距離ちょっと増えてもリング廻ったほうが気分エエし。とか。直線と半周の距離感の違いを経験して体で覚えて夫婦間で共有しチョイスしているのだな。大屋根リング半周。大屋根リング直線。大屋根リング内。そんな「単位」使うかな…..。

ちなみに白川郷は、ほぼ大屋根リング内の集落だった。

万博あれやこれや。

お盆休暇後半。奥方によって万博の予約が2回されてあって、この暑さのなかで行列に並んで待つのは、ほとんど「修行」だな。それで気が付いたことがあって、多くのひとが、長時間並んで入館するのを楽しんでる感じがしたのだ。午後4時すぎ、イタリア館の待ち時間は3時間以上だったので、レストランの列に行ってみると、テラス席なら30分ほどで入れた。夕方で日差しも入らず風吹いて丁度エエ感じ。横の席から聞こえてくる会話は、5時間並んでイタリア館に入った話だった。

その話を小耳に挟んだ奥方は、今度はイタリア館だけ目当てに3時間以上は並ぼうっと宣うのだ。うちのベッショ大工は4時間並んでイタリア館に入場したという。今回から折りたたみ椅子を用意した。椅子に座ってスマホ見ながら音楽聴きながら円形リングの木組みの下なら、なんとか我慢できるかな…もはや「行列メディテーション」になっているとおもう。

そうそう何回か行くと、その木組みの円形リングの貫構造の摩擦抵抗の仕口の違いに興味がわく。建築雑誌にはリングの施工は3工区に分かれ、それぞれの工法の違いが書いてあったが、木村工務店でこの施工に携わったなら、どんな仕口の金物を考えて施工するか、木と木がきしみ合って摩擦抵抗する方法が他にもありそうな気がするが、構造の下山さん交えて現場監督と大工とでワイワイガヤガヤやったら楽しかっただろうなぁ…..なんておもう。今度、構造の下山さんと飲むときには、そんなのアテにして飲もっ!

竹中工務店の設計部の知り合いのヤマザキさんがプロジェクトリーダーとして担当した「森になる建築」を見る。メチャクチャ暑いなか、中に入ると、クールチューブと氷の椅子で、外部よりずっとましだった。植物由来の樹脂を材料とした、3Dプリンターでつくる建築だそうだ。外観はティピーテントのようで、内部に座るとパンテオンのように丸穴が空いていて、小さくてカワイイ。行列もできずストリートの中に小さく佇んでいるのが、現代的万博らしくて、とってもエエとおもう。

そうそうクールチューブでおもいだしたが、しまなみ海道の宿、輪空のお二人が、万博に行くためにうちの家に立ち寄ってくれた。その時こんなクールチューブが巻かれたザックを頂戴した。凍らせたペットボトルを背中のバックの中に入れて、150ccの水を入れると、胸ポケットに入ったバッテリーとポンプで、その凍ったペットボトルによって冷やされた水が、クールチューブの中を循環するのだ。万博で使ってみると、背中が冷えてとっても心地良いのだ。このお陰で、アメリカ館の行列を待てたが、ペットボトルの氷が、3〜4時間ほどすると溶けて、急にエネルギーが枯渇したアトムのようになって、死にそうな気分になってしまうのだった。

予約で当選したパソナでみたIPS細胞の心臓とかアトムとかも万博的で良かったが、行列もなく、すっと入れた「量子力学」をテーマにした館が、おたくの集まった雰囲気も含めてとっても楽しかった。「量子もつれ」なんていうのが実用化されている姿を垣間見れて、万博っ!て感じ。暑くて我慢できなくなるとコモンズ館を目指した。何回か入館しているが、とってもプリミティブな展示で見る価値はとっても薄いが、行く価値はあるねぇっ!世界にある多くの国々を知れるし旅したい気分にさせられる。その国々の民族の人がその場に存在しているのがエエし。

イギリス館のジョニーウォーカーバーが並ばずに入れること知って、喉渇いたら、IPAビール飲みに2回行った。アメリカ館のレストランも行列の横から入って並ばずにビール飲んだ。スペイン館もレストランの横から入ったら出口にある立ち飲みでワイン飲めると知って2回飲んだ。たぶん、もっと、知らない、いろいろな楽しみ方があるのだろうなっ。ま、どこも高いけど、それはそれで割り切って、お祭りとして楽しむことにした。そんな万博あれやこれや。

大雨でこんな予期せぬ旅に。

雨が降り続いたお盆休暇前半。前回のブログで、長男家族4人と次男と私の6人で、丹沢のバカ尾根を登り、堀山の家に泊まっているはずだ…..と書いたが、大雨の影響で結果は全く違って予期せぬ道中になった。8月10日の大阪は朝から雨。新名神と新東名を走るあいだもずっと雨が降り続いた。丹沢へのアプローチの渋沢駅で次男をピックアップした時はどしゃ降りの雨だった。

駅からどしゃ降りの雨のなかを駆けて車に飛び込んできた次男は、ビームスゴルフのTシャツを着て雨具もコンビニで買うわっという、まったく山に登る雰囲気じゃぁなかった。もちろん小学校低学年の頃から何十回も登っている勝手知ったる山だというものの、ちょっと山なめてるんちゃうっ…..ていうと、靴だけは登山靴やでぇっと大阪弁で返す。東京に住んで10年近くになるのに、いまもかなりの大阪訛りで喋っているらしい。

近くのコメダでモーニング食べながら作戦会議することにした。堀山の家の女主人のなっちゃんにLINEで連絡取ると、小屋は森林限界の手前なので、まだましだが、予報では午後3時までは降り続くという。明日も一日雨予報だった。小学生の子供連れなので、無理しなくても…..。雨で山嫌いになられても…..。なんていうアドバイスもあり、ウエザーニュースの山の天気予報も1mmから5mm以上の雨に、どんどん悪化の方向に向かっていった。駐車場もどしゃ降りだった。

そんなこんなで、オトコ3人だけなら絶対登るけど…..magosとその母連れなので…..なんていうちょっと言い訳がましく、急遽、ここから車で30分ほどの大磯ロングビーチに連泊することになった。もともと山小屋に泊まった翌日は、昼からオトコ3人で「江之浦測候所」を予約してあり、夜は新幹線でやってくる奥方と合流し、山を登ったあとのmagosをプール遊びさせて、7人で宿泊する予定だった。それにしても雨のなかでも多くの子供たちがプールに入っているのには驚くが、とりあえずプールも付属するサウナで、ゆったり過ごす二日間になった。

翌日。写真家で現代美術作家で建築家ともよべるような杉本博司と建築家の榊田倫之が主宰する新素材研究所による「江之浦測候所」を見学する。ホテルから車での移動中は大雨だったが、到着した途端、ピタッと雨が止んだ。それにしても、お金と創造力とセンスとコレクターの全てが備わると、こんな創造的な遊びができるのか…..凄いなぁ…..なんておもった。また機会があれば、是非もう一度行ってみたい。

大磯からの帰り道は、若いサウナーであふれかえる静岡のサウナ「しきじ」に立ち寄り、唐突に名古屋で宿泊することにした。翌朝、行列ができるほどの人気で驚いた名古屋市科学博物館の特別展「古代DNA・日本人のきた道」を見学して、熱田神宮に参拝し、流石に3時間は待てない蓬莱軒で、ひつまぶし弁当を買って、大阪に帰り着いた。大雨が、こんなまったく予期せぬお盆休暇前半の旅へと誘ってくれた。木村工務店では8月18日月曜日から通常営業です

「霊を迎えて供養する」お盆

「お盆」になると、それはほとんど「夏休み」と同義語で、若い頃はどこに遊びに行こうかと楽しみでしかたなかった。子供の頃は、どこかに連れていってもらえるのが楽しみだったし、大学生の頃になると、「旅」なんていう感覚が理解できるようになって、お盆に実家にいる機会がなかった。祖父母と両親が亡くなってようやく「お盆」の「先祖の霊を迎えて供養する」感覚に、現実感を伴えるようになった。

結婚し、長男が生まれ、いくつになった時か記憶が曖昧だが、お盆休暇に北海道を旅することになって、ひとまわり歳上のセツを中心とした東京在住の友人たちと、屈斜路湖コタン温泉露天風呂の芝生広場で、待ち合わせをし、 ベースキャンプを張って、ゆったり過ごしながら、車であちらこちら観光しようということになった。

その旅の計画の時に、武田泰淳の「森と湖の祭り」を読んでから屈斜路湖畔に集合しようとセツからの提案があって読んだ。共有する心のようなものが芽生え、旅に多次元的な楽しみと面白さを創造できるコトを知った。その後、武田泰淳の著作もいろいろ読んで、その旅の余韻と影響が持続的に続くコトになった。

そのセツが、丹沢の小屋番をしている堀山の家で亡くなって10年以上がたち、今日は、長男からの提案で、その小屋に、magosを伴った長男家族と次男も交えた6人で登山して、小屋に泊まり、お盆的な供養もしようということになった。このブログをアップした8月10日日曜日は、そこに泊まっているはずだ…..。というわけで、前日の土曜日に書いて予約投稿した。ちなみに長男と次男が高校生になるまでは、毎年連れだってその山小屋に泊まりに行ったものだ。

先日の欧州建築視察旅行で一緒だった秋山東一さんは、17歳ほど歳上の師匠でもあるが、その秋山さんが、若い時に衝撃を受けた建築を皆と一緒に共有したいということで、このブログの「機転が利く」という題で書いた、イングランドのレスターという都市にあるジェームズスターリングのレスター工科大学工学部棟に訪問した。

それはそれとして、その旅行から帰って1週間ほどした日に、秋山さんから「これ面白いです」というだけのメッセージが来て、そのリンク先を開けると「ロスト・キング500年越しの運命」というアマゾンプライムのビデオだった。レスターで建築を見学した時に、バスガイドさんが、この近くの教会でリチャード3世の墓が2012年に発見された。というアナウンスがあって、何気に興味を抱いたので旅行から帰ってウィキペディアなどで調べた。秋山さんも同じだったようで、このメッセージが送られて来た。

すぐに視聴した。とっても良い映画だった。500年越しにリチャード3世の墓を発見するその物語の主人公はスコットランド出身の専門家でもない女性で、その映像には、エジンバラのフォース橋も背景に映し出されていたので、旅の想い出とも重なったし、秋山さんがフェースブックに投稿された「リチャード3世の墓発掘のドキュメンタリー映画版」も視聴して、この旅の多元的な楽しみが持続することになった。なによりリチャード3世の物語を一緒に共有している喜びのようなもが楽しかった。

その秋山東一さんが亡くなった。と8月7日朝のフェースブックの投稿で知った。突然の出来事だった。

ロンドンにて。秋山東一さんのお誘いで、コスモホームの鈴木さんと、ロンドン在住のフォントデザイナーの河野英一さんと、4人でロンドン・トランスポート・ミュージアムを見学した。それが良き想い出として残るのだが。その後に、ケンジントンのMarks & Spencer で開かれていた日本展を見学し、ラーメンを食べながら、河野さんが、今度の万博の「リング」は視てみたい….という話題になった。河野さんの帰国とともに秋山さんと3人で万博いきましょう!と誘ったが、秋山さんは、この万博に行くコトに乗り気そうでは全くなかった。それはとっても理解できるコトなのだが、それでも1日だけ「阿呆」になってください!万博をある種のお祭りだとおもえれば踊る阿呆に見る阿呆的に1日だけ3人で楽しめる可能性ありますから、うちの家に二人で宿泊してください…..と皆でラーメンの汁をすすった。 

この物語の結末は、3人での万博リング見学は実現しなかった。で終わる。
秋山東一さんという存在に感謝すると共にご冥福をお祈りします。

木村工務店のお盆休暇は8月10日から8月17日の一週間頂戴します。 
皆さん良きお盆休暇を!

日本的感覚

建築家のウエノくんとミナミで食べて飲んで、バーに移動する途中に、インバウンドで溢れかえる心斎橋商店街を通って、うちで施工した心斎橋岩橋ビルの店舗に立ち寄った。「心斎橋筋商店街の来街者数は年間50百万人を超え本年は過去最高になる勢いです。ですが地価の上昇、それより固定資産税の上昇の勢いがそれを超えており頭が痛いです」なんていうメッセージをオーナーさんからもらった。確かに土地の価格高騰を抑える「政策」があっても良いようにおもう。土地を転がして儲かる時代じゃないほうが良さそうだし。若い世代だって、もはや簡単に土地を買えない時代になってきたし。土地公示価格の上昇が経済指標の時代なのかね。国が土地から税金を取り過ぎないほうが良い時代のような気がする。

大阪人ばかりが心斎橋筋を歩いていた時は、フツウに左側通行だったが、インバウンドで溢れ、もはやその秩序が乱れ、混沌とした状況。ぶつかるぶつかる。それがちょとオモロイ。日本国内からやってきた人が心斎橋商店街を歩いたら、周りの様子に気遣いして左側を歩くのだろうが、インバウンドの方々には、そういう気遣いの習慣が薄いのだろう。

で、それが、最近、DNA分析の技術がとっても進化したらしく、ミトコンドリアDNAの女系の系譜から核DNAの男系の系譜までたどれるようになって、そういう事を分かり易く解説してくれはる国立科学博物館の館長の篠田謙一さんの話や著作が面白い。縄文時代とか弥生時代の人種のありようがDNA分析によって明確になってきているそうだ。縄文から弥生そして古墳時代には多くの人種が日本にやってきて、混ざって、いまの日本人ができているという。心斎橋歩きながら「DNAが解明する多元的構造」をおもいだして、さて、これから、インバウンドの方々との共生がどのように展開していくのだろうか….なんておもった。

「こもれ日」とか「水面の光のゆらぎ」とか、そういうコトバは日本独特の表現らしい。同じような自然現象に同じ美つくしさを世界の多くのひとが感じるのだろうが、それを表す「ことば」や「美意識」に日本の独特の感覚があるらしい。「儚さ」「静けさ」「移ろい」という感情の余韻から「侘び寂び」「物の哀れ」の美意識につながっていくのだろう。で、朝、自転車に乗ると、そういう景色に出くわし、そういう感覚が忍び寄ってくるのが、ちょっとした楽しみ。

↑ 朝護孫子寺の参道を歩くと、時として、朝の木漏れ日に出会う。

↑ 信貴山に吊り橋があって、誰もいない吊り橋の真ん中に立って、池の水面を眺めると、水のゆらぎが、気持ちエエ。

↑ 柏原の葡萄畑から大和を眺めると、葡萄の養生シートに朝日があたり、風ふいて、その光のきらめきが気持ち良い。

そうそう、7月31日と8月1日に地元の清見原神社の夏祭りがあって、4台の地車が、会社の前を通過する。ご祝儀を渡し一緒に大阪締めをするのが楽しみ。気を使って「木村工務店の商売繁盛を祈願して…..」なんて口上を述べてくれる。にしても、今年は暑すぎて暑すぎて、子供たちが綱を引くのが少ない感じだし、元気な地車ギャルの姿も少ないし。地車が通過しても家から道路に出て邪気を払ってもらう人もほぼいない。そんななかで、地車を運行する皆さん、ほんと、ご苦労さまでした。

そんなこんなで、選挙もあって、なんとなく「日本」を「感覚」してみた週だった。

「国宝」な連休になった。

猛暑が続く。magosたちの夏休みが始まって、日曜日の早朝から枕元に忍び込んできてたヤツがいて、なんだぁっ!と驚くと、プール開きをやって!っと云う。しゃぁないなっ! 朝の涼しいうちにやればエエのだが、日曜日の朝はダラダラして、スパー銭湯の朝風呂にはいってから、ようやく決心ついて、プール設営しだしたら、汗だく汗だく。朝風呂の意味なかったなっ。見かねたmagos母が一緒に手伝ってくれてなんとか完成。水を貯めるのに数時間かかる。これって省エネなのぉ…..。日が傾きだしてから水溜まってプール開き。監視員としてその様子を眺めながらビール飲んで、暫くしたらもう我慢出来ずにプールにドボン。

プールにつかりながら、庭の隅に小さなサウナ小屋作りたいなぁ。プライベートサウナ入ってプールにドボンしたら気持ちエエやろなぁ…..と、以前 ipad で描いた図面を思い浮かべながらジャブジャブした。

そうそう加工場で大工さんが古材と新材のハイブリットな構造材手加工をして3ヶ月ほどになる。ついに猛暑の季節になって、フミノ棟梁の服装が、現代的大工さんでエエ感じ。空調服着て、短パンにレギンスに、コンバースの一つ星。このコンバースは安全靴になっているそうで、つま先押して、ほらぁっ、硬いでしよぉっ!て。カッコエエなっ!

連休21日祭日の早朝。このごろ休日の前日に飲みに誘われる機会が多くなって、日曜日の朝は自転車乗る気力全くなし状態が続く。この連休月曜日の朝を逃したら…..と、朝早くから起きて、十三峠登ったら、日影やけど、あついあつい。しんどいしんどい。おそいおそい。唸るような自転車の音が後から迫ってきて、おはようございます!と爽やかな挨拶とともに電動ロードバイクに乗ったちょっとボリーミーな女子に抜かれた。もうそろそろ電動でもエエかなっ。

午前10時頃、あとの予定なかったので、「国宝」でも見にいけへんっ!と奥方にそれとなく誘うと、評判エエから見にいきたいわっ!という。ソソクサとミナミの東宝シネマの予約状況を調べると、20時35分から23時45分のヤツしか二人分隣席は空いてなかった。さすが人気映画。千日前線難波駅の南巽行き最終便12時1分発でギリギリ帰れそうなので、シニア券2枚で予約。こういう時がワタシタチシニアやなっと実感する瞬間。

映画始まって、つり橋の映像があって、学生時代の主人公二人が戯れるシーンに、あれっこれっ玉手橋ちゃぅ。今日、この石川沿いの橋の下を通るサイクリング道路を使って、富田林でモーニング食べるか、金剛ロープウェイまで行こうかともおもったが、この暑さにしてはスタートがちょっと遅いし、川沿い日陰なく暑いし、長いし、時間かかるし、十三峠往復で時短を選んだ。そのお陰でこの映画を見に行けたんだなっ。そんなこと浮かんで、脚ちょっと張ってるのも感じながら映像を視た。長さを全く感じさせないエエ映画だった。

「Expoの空」

7月13日日曜日。午後1時をちょっとまわった時刻に夢洲の駅に着いて、Expo東口ゲートに向かうと、メチャクチャの行列にたじろぐ。2週間ほど前に午後12時の予約が取れたからブルーインパルスを見に行くでぇっ!と奥方から指示がでて、素直にOKっと云ったものの、想像を上回るひとひとひと。ゲートを通過するのに1時間30分ちかくかかった。照りつける太陽。アスファルトからの輻射熱。汗だく。奥方はワークマンで買った黒の空調服で快適やわっと宣う。その姿を見ながら額から汗がおち、背中に汗も流れ出し、一瞬音をあげそうになったが、子供達や乳母車に乗った赤ちゃんたちが黙って文句も言わず待っている姿に、大人げのないワタシになってしまうことを恥じて踏みとどまった。それとこの特殊な状況下で、イヤホンから流れる音楽が、忍耐を楽しみに変換してくれた。

午後3時頃にブルーインパルスがこの万博の円形リングの上を通過するらしいが、ゲートをくぐれたのは午後2時30分をまわって、円形リングに上がる階段は既に閉鎖され入場制限されていた。何気にリングの上からブルーの空を見上げブルーインパルスの機体と白煙の軌跡を眺め、円形のリングに囲われたパビリオンの上を通過する勇姿を想像していたので、一瞬あっっと想ったが、気を取り直して、海に面したステージ近くの比較的すいている場所に移動して待つ。パビリオンには行列がまったくなく、閑散としていて、このチャンスにパビリオンを見学するアイデアもあるが、やっぱりブルーインパルスを見る方に心が動いた。

男性のエエ声の場内アナウンスが始まり、1番機から搭乗者の紹介が始まると、拍手が巻き起こる。特に搭乗者が大阪府出身の…..とアナウンスされると、とっても大きな拍手と歓声が巻き起こった。ブルーインパルス搭乗者はスターなのだな。正直、ブルーインパルスを見たいという衝動はとっても薄く、奥方の想いに乗っかった程度だったのに、なぜか胸が熱くなってくる。円形リングを突き抜けるようにブルーインパルスが飛んでくると、独特の響めきと歓声があがり白煙を引きながら真っ青な上空を通過し彼方に飛んで行く姿を見ると、涙が出そうな気分になる。なぜなんだぁ。不思議だ。

あれやこれやの演技飛行が終わり、隊長機一機だけが、お礼に円形リングをぐるっと一周し、西の空に消えていく時、多くのひとが手を振り、拍手をして、ありがとう!って。「ブルーインパルスって演技のためだけに存在しているのとちゃうよねぇっ」とか「平和な空を飛び続けるブルーインパルスであってほしいねっ」とか「日本の空を守ってねっ」とか、そんな会話がちらほら聞こえてきた。

「横田ラプコン」というコトバをあらためて知る。横田基地が管轄する航空管制空域というのがあるらしく、米軍が関東圏の広域空域を掌握しているという。ブルーインパルスが東京上空を通過したのは、2020年の医療従事者への感謝飛行と2019年の天皇即位祝賀パレードだけらしい。米軍の許可がいるという。知らんけど。日米地位協定なんていうコトバをブルーインパルスが飛行する「Expoの空」を見上げながら考えてみた日曜日だった。今日は選挙の日曜日だな。

「バターシー発電所」

とにかく暑い日々。庭のモミジは、この暑さで葉っぱが縮こまって、3分の2ほど落葉した。身軽になってこの暑さを乗り切ろうとしているのだな。そうそう例年よりアゲハチョウがよく飛んでいる気がする。

「欧州建築視察ツアー」の余韻が残る…..ロンドンのテムズ川沿いに「バターシー発電所」という元発電所を再開発した複合商業施設があって、そこを見学する。発電所の四本の煙突は一度解体し再建築したそうだ。やるねぇ!ランドマークやしね。ハイブランドも入ってエエ感じの商業施設で川沿いには芝生があって気持ちよさそうにカップルが寛いでいた。この向こうには建築家フランク・オ・ゲーリーのゴチャゴチャしたデザインの高級マンションも建って、新しいロンドンの観光スポットらしい。

それで、上の写真は「ピンクフロイド」の「アニマルズ」という1977年のアルバムジャケット。下の写真は、2018年発売の「ピンクフロイド」の「アニマルズのリミックス版」のアルバムジャケット。工事中の様子がよくわかる。「ぶた」が浮いているので有名なアルバムで、当時18歳ぐらいだがなぜか買わなかった。FM放送で流れてくる「Pig」か「Dog」か忘れたが聴いた記憶が残る程度で、もうすっかり忘れていたが、この旅をきっかけに想い出した。一緒に旅行した埼玉の工務店のアジキさんが、この商業施設のお土産店で、1977年のこのレコードアルバムを買った姿を見て、ちょっと悔しかったなぁ…..。

「原子心母」「狂気」「炎」は買ったが、オンタイムの「アニマルズ」を避けた。ジャケットが不気味だったからなのか。ウエストコーストな軽い音楽のほうが良かったからなのか。気分の問題とレコードを買う優先順位があったようにおもう。いまApple Musicで古い音楽が気軽に聴けるようになって、それにコードレスのエエイヤホンがいろいろ発売されて、「狂気」はたまにイヤホンで聴く。音を縦横無尽にぐるぐる動かしまくるのが凄いし心地良い。それに大学生の頃に友人たちと車で旅した時、霧で覆われた箱根あたりで、カセットでかかった「狂気」が印象深く、その時のコトを想い出す。

帰国して「アニマルズ」を聴く。エエアルバムだな。旅した後の今なら、イギリス社会の労働者階級と支配者層の対立を動物に例えて風刺した歌詞と楽曲も理解しやすくなった。Dogs 犬(支配される側になりたくない野心家)Pigs 豚(権力を掌握し欺瞞を広める者)Seeps 羊(何も知らずに従う大衆)とChatGPTが解説してくれた。リミックス版を聴いてたら、石川さゆりの津軽海峡冬景色をおもいだした。で、ChatGPTくんに聞いたら…..ピンク・フロイドの『Animals』と石川さゆりの『津軽海峡・冬景色』は、ジャンルも文化も異なるものの、次の共通点において深い共鳴が見られます。・下降旋律と情念の波・語るような歌唱法・風景と感情を重ねる構成・音響で孤独や喪失を描写。したがって、『Animals』は西洋的形式の中で、演歌的情感を追求した作品とも言えるのです。ま、ほんとうにそうなのか…..しらんけど。

「ヒプノシス」というデザイン集団がピンクフロイドのアルバムジャケットのデザインを担当していたと知る。どれも独特にエエデザインだし、あっ、そういえば、ピンクフロイドのメンバーのニックメイソンのソロアルバムのこれをジャケ買いしたのをおもいだした。これもヒプノシスのデザインだったのだな。レッドツェッペリンやユーミンのアルバムもデザインしていたらしい。ちなみに木村工務店の社員紹介はブルーノートのリード・マイルスがデザインしたジャケットデザインをコラージュしている。ChatGPTちゃんがこんな比較をしてくれた。

項目リード・マイルス(Reid Miles)ヒプノシス(Hipgnosis)
活動ジャンルジャズ(主にBlue Note)ロック(プログレ/ハードロック)
ビジュアル手法モノクロ写真+タイポ写真合成+幻想的イメージ
主な表現技法トリミング/グリッド構成/制限色コラージュ/合成/超現実
タイポグラフィ強調(構成要素)抑制(または非表示)
色彩感覚限定色・寒色系が多い彩度高い、加工色
コンセプト都市的・知的クールさ神秘・概念・幻想の視覚化
デザインの目的音楽の「品格」や洗練を強調音楽の「世界観」や「謎」を創出

「バターシー発電所」を見学して、その余韻を「ピンクフロイド」の「アニマルズ」で楽しんだ1ヶ月だった。

「サボア邸」と「ナポレオンの墓」

「ツール・ド・フランス」が、日本時間の土曜日の夜から始まって、J SPORTSで視聴していると、フランスのランスという町を通過し、ルーブル美術館ランス別館のヘリコプター映像が写った。解説者はちょっとだけ紹介して、すーっと流したが、この美術館の設計は、日本人の設計ユニットのSANAAなんやでぇっ!とテレビ画面に向かってツッコミを入れておいた。上から見たらこんな感じのランドスケープなのだな。人の目線で見れば、美術館の外壁のアルミパネルに、まわりの景色がぼんやりと映り込んでる建築写真を想い出した。

先月の「欧州建築視察ツアー」の余韻がまだ残っている…..。イギリスが中心だったが、最後の二日間はロンドンからTVGに乗ってパリで宿泊した。パリ郊外にある、ル・コルビジェのサボア邸は、コロナ前のこの同じツアーの時に、初訪問して、それなりに興奮しながら見学し、一生に一度の体験だと思っていたのに、人生で2度もサボア邸を見学出来るとは考えもしなかった。というより、1回見てるので、別に2回も行かなくても、他の見学場所でエエけど…..ぐらいの感覚だった。

2回目になると、1回目の興奮がなく、全体的に落ち着いた気分で見ることができて、より良く感じられ、2回行けて良かったなぁっと想ったが、それでもこの上の写真のように、道路から門扉を通り、左に折れて木々の間を通り抜けながら右に曲がると、木々越しにこの建物が見えて、建物に吸い込まれるように微妙な下り坂の芝生をワクワクしながら皆と一緒に歩いているワタシを発見するわけで、建築としてアプローチから良く出来ているのだなぁっと、あらためておもう。

そうそう日本に帰ってからの日曜日に、お風呂屋さんで湯船にどっぷり浸かりサウナに入って旅の疲れを癒やしたが、あらためてサボア邸でお風呂を撮影して、この写真を見て、おもうのは、右の白いタイルのところにサウナ部屋があって、このブルーのタイルの浴槽が水風呂で、タイルの寝椅子で、ととのう…..そんなコルビジェ・サボア邸デザインの水風呂一体型サウナってどうですか…..。ま、リミックスみたいな感覚。

サボア邸のお土産は、この「VILLA SAVOYE 0ユーロ」。サボア邸を見た翌日のパリ二日目は、帰国までの自由時間があって、二度目のルーブル美術館に行けるチャンスもあったが、出発前から予約はしなかった。それより秋山東一さんのお誘いで、ナポレオンの墓と軍事博物館を見学することになった。日本人見学者はたぶん私たち二人以外にいなかったようにおもう。

それはそれでとっても貴重な体験だったが、途中で、パリのナポレオンの墓は、日本では徳川家康の日光東照宮みたいなものかなぁっ。と考えながら歩いたが、何かが違うようにおもうし、それが何だろう…..と、日本に帰ってからChatGPTに聞いてみた。

  • ナポレオンの墓は、「フランス国家の軍事的栄光と近代史の象徴」。
  • 東照宮は、「日本の平和統治と神格化された家康の霊的支柱」。

つまり、どちらも「国家的英雄の記憶装置」としては似ていますが、
ナポレオンは近代的英雄
、家康は神として祀られる霊的存在という違いがあります。

ということらしい。そうなのぉ。それがワタシ日光東照宮に行ったことがない。こんなご縁をきっかけにして、一度行ってみようとおもう。

それはそれとして、その見学のあとに、パリのビストロ・ビクトワールで食べた鴨のコンフィが、この旅の一番美味しい食事だったなぁ。

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