「機転が利く」

名古屋のコスモホームの鈴木さん主催の「欧州建築視察ツアー」に参加し、大阪の自宅に無事帰りついて、もちろんお米も食べたくなるが、それ以上に強く欲したのは、ウォシュレットだった。千葉の工務店のサノさんはTOTOの携帯ウォシュレットを持参したので、とっても快適だったよ!と言っていた。Amazonで買えるからっ!と教えてくれたので、次回海外旅行に行くときは購入しようとおもう。それにしても帰りの飛行機のなかではぐっすり寝たので、早く帰りついた感じがしたが、パリから羽田へはこんなルートを通るのだな…..。
スコットランドとイングランドとパリでは、伝統的石造りの建築が目の中にたっぷり飛び込んできて、その重厚さにどっぷりと浸かったが、そんななかで、視察ルートに、こんな近代建築があり、私の視覚のなかにさまざまな印象が飛び込んできて、その印象を咀嚼しながら楽しんだ…..。

イングランドのレスターという都市にジェームズ・スターリング設計によるレスター工科大学工学部棟がある。大学構内で貸し切りバスを降りて、校舎と校舎で挟まれた道を歩いて行くと、唐突に、赤いレンガ造りの上にガラスの造形物が出現し、ダイヤモンドが集まったようなガラスの天窓群は、近づくに連れて、現代美術のような存在感として、圧倒された。


見たこともない造形物の印象によって、気分が高揚して、歩くスピードが速まるのを感じながら歩いていると、水平方向に伸びるダイヤモンド型のガラス屋根の向こうに、垂直性のあるレンガとガラスでできた棟が飛び込んできて、で、あの角を早く右に曲がり全貌を見たいという気分にさせられた。

とっても歪んだ写真だが、目の中に飛び込んできた光景は、こんな感じだった。それにしても、なんで、こんな造形のガラス屋根群が成立するのか、まったく理解できなかったが、とにかく、ワタシ的には、とってもカッコエエ! だった。

今回の見学は、外観だけだったので、少し歩いて引きのある場所から、全容をカメラに収めようとしていると、今回のツアーには毎度イヤホンガイドを付けて音声案内があったのだけれど「急遽、内部を見学出来ることになったので、集合してください」というアナウンスだった。スコットランド在住の日本人女性ガイドさんがロンドンまで案内してくれることになっていたので、入り口前で立ち話をしている先生のような方々に、お声がけをし、日本から見学に来ていることを伝えて、内部を少しだけ見るコトは出来ないでしょうか…..とお伺いをたてると、OKがでた。というのだった。「機転が利く」とはこういうコトを云うのだな。参加者皆で、ガイドさんの、そのプロフェッショナルな姿勢に感謝した。

玄関ホールだけでも見るコトができて、満足だったが、なんと内部の実験棟も案内して頂ける事になった。外観から想像していた以上に、美しい光に溢れた「工場」だった。こんな「工場」造れたらエエねぇっ。ま、でも、日本では、雨漏りだらけになって、アカンかも、夏は暑すぎるし、湿気多いので結露だらけかも…..。にしても、案内人の誇らしそうな説明を聞くと、1959年から1963年に建てられて、60年近く経つ今でも愛されている様子が伝わってきて、この場所の気候風土にも合っているのだろう。


内部を視て少し理解できたコトは、平面が矩形の「工場」に、よくあるノコギリ屋根のような屋根を、ガラスの三角屋根として、矩形のX軸Y軸に対して、平行でなく、斜め方向に掛けることで、「工場」が複雑で豊かな光に満ちあふれた天井空間になっていた。あらためて内部から視ると、外周部と接する部分のガラス天窓のデザイン的処理の仕方が、普通なら三角形の小口が見えて終わるところを、ダイヤモンド型に見えるように、なるほどなぁ…..凄いなぁ…..なんておもわせるデーティールと造形美の処理に見えた。知らんけど。


「棟」の階段ホールの窓からガラス屋根群を眺めると、その階層によって、さまざまな見え方になり、とってもドラマチックだった。が…..、工務店のワタシとしては、この窓から視れば視るほど、雨仕舞いの難しさが伝わってきて、この建築を建設した方々に敬意を表したいし、今でも、雨漏りの補修もしながら、長く使い続られるように、持続的なメンテナンスを続けているのだろう…..。そういう点も含めて、凄いとおもう。

スコットランドでもイングランドでも、晴れたと想えば雨、雨降っても暫くしたら止んで、それの繰り返しだった。時にはダウンジャケットを着込まないと寒くて震えるぐらいの時間帯もあった。で、レスター工学部棟の見学が終わると、雨が降って、傘をさしてバスの駐車場まで行くことになった…..。そこで偶然視た、雨仕舞いの方法が、こんな感じだった。カッコエエですね。レンガ壁の地面と接する部分の「斜め」は、水仕舞いも兼ねていたのかね…..? あっ、ちなみに、この傘さしているひと、携帯ウォシュレット持ってきたひとです。
建築家秋山東一さんの想いによってレスター工科大学工学部棟の見学が決まったそうだ。若い時に「衝撃」を受けた建築だそうだ。今の世代には忘れ去られたような建築におもうが、今回の参加者皆で、その「衝撃」を「共有」できた気がする。Thanks。